はじめに

16期連続増益に黄信号?

次に、7年ぶりに営業減益となった原因ですが、これは言うまでもなく、人件費の高騰です。4月に正社員については1万円のベースアップ、パートとアルバイトについては時給を20円引き上げています。

上期をならした販管費率は前年同期比で0.9ポイントの上昇でした。これを四半期ごとに切り出すと、第1四半期(3~5月期)は同1.3ポイントの上昇ですが、第2四半期(6~8月期)は0.6ポイントの上昇にとどまっています。

このため、会社側は通期の業績予想を変えていません。前半の未達分は後半で巻き返すシナリオです。

しかし、この計画のハードルはかなり高い印象を受けます。というのも、現在の通期予想を達成するには、下期の6ヵ月間で、前年同期比7.3%増の売上高に加え、営業利益率を0.7ポイント引き上げる必要があります。

ところが、増収を牽引する出店計画は、前述の通り、純増25から14に下方修正しています。出店余地が減少してきていることが原因です。

上期の増収幅が4.2%で、店舗数が純増16だった前期の増収幅は5.5%ですから、純増14前提で通期5.8%増収を達成するハードルはかなり高いと言わざるを得ません。営業利益率も上期は0.9ポイントダウンでしたから、0.7ポイントアップは決して容易ではありません。

株価は年初来高値から25%ダウン

市場の評価もこの半年でずいぶん下がっています。1年前の10月5日終値は2,566円で、今よりも300円強、率でいうと14%ほど高い水準でした。その後、年末にかけてさらに上昇し、年明けの1月15日終値は3,029円でした(いずれも分割調整後)。

しかし、2月5日に1月の月次実績が発表されると、じりじりと下がりだします。既存店の客数が前年同月を下回ったことが影響した可能性があります。その後、2月、3月は既存店の客数が前年同月の100%超を維持しましたが、4月以降は100%を割り続けています。

この影響からか、株価もツレ安となり、今年の10月5日終値は2,249円でした。1月15日の終値比だと25.7%の下落です。

10月3日に公表された9月の月次実績も、単月で既存店売上高は0.9%減、全店売上高は2.0%増ですので、7.3%増という下期目標にはほど遠い数値です。売り上げが未達でも利益が達成できれば投資家は納得しますが、はたしてどこまでコストを圧縮できるのでしょうか。

クオリティか、コストカットか

この会社は毎年、第4四半期(12~2月期)に販管費率が他の四半期に比べて3~4ポイント上昇します。決算賞与を出しているからで、これを減らせば計画は達成可能なはずですが、実行に移せば従業員のモチベーションは下がってしまいます。

計画には届かないまでも、前期比で営業増益を達成するには、前下期並みの営業利益率前提で214億円(前年同期比4.9%増)の売上高が必要です。

16期連続での営業増益には黄色信号が灯っている、と言っていいかもしれません。とはいえ、連続増益達成のためだけに近視眼的に店舗のクオリティ低下につながるようなコストカットをすれば、顧客離れが起きることは間違いありません。

投資家の目線だと、投資スタンスに応じて必要と考える施策は異なりそうですが、少なくともユーザーの立場からすれば、店舗運営のクオリティ維持・向上を最優先に取り組んでほしいところです。

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