はじめに

流通大手のイオンは、10月17日から魚総菜シリーズ「トップバリュ Fishi Deli おさかな惣菜シリーズ」を全国のイオン系列店約2,600店舗で販売開始すると発表しました。

商品数は最大20種類。店舗の売り場にも常設専用コーナーを設ける力の入れようです(一部店舗を除く)。

今、イオンがパック入りの魚総菜に力を入れる理由は何なのでしょうか。16日にイオン葛西店で行われた新商品お披露目会を取材しました。


温めるだけですぐ食べられる

今回新たに発売とされた「トップバリュ Fishi Deli おさかな惣菜シリーズ」は、いずれも加工調理済のパック入り商品です。骨を抜くなどの下処理がされているので、食べる前に電子レンジで温めるだけですぐ食べることができます。

20種類もあるだけあって、そのラインナップはバラエティに富んでいます。「骨取りさばの味噌煮」や「骨取り鮭の塩焼き」など、魚総菜としてよく見かけるものから、「銀たらの柚庵(ゆうあん)焼き」や「いかと野菜のやわらか煮」などアレンジが加わった品もあります。

中でも「骨取りさばのハーブレモン」はさっぱりと洋風な味付け、野菜と一緒にパンに挟めば“サバサンド”に早変わりします。さらに「たっぷり海老の贅沢グラタン」や「明太もちチーズグラタン」など、それだけで一食を賄えそうな品もあります。

価格は商品によりますが、1パック198円(税抜き)から。冷蔵保存が必要ですが、商品によっては1ヵ月近く保存がきくものもあるようです。

3つのテーマで商品展開

イオンによると、今回の20種類の商品は大きく3つのテーマに分類できるそうです。

1つ目は、環境と社会に配慮した水産物を使った「“つなぐ”おいしさ」シリーズ。環境に配慮した漁法や養殖法で獲られたことを証明する海洋管理協議会(MSC)認証や水産養殖管理協議会(ASC)認証を取得した魚が使われ、パッケージにも認証マークが表示されています。

2つ目は、世界三大漁場と言われる東北三陸沖でとれた水産物を使った「“旬”のおいしさ」シリーズ。旬の時期にとれた水産物を現地工場で加工した商品が並びます。こちらはパッケージに「にぎわい東北」のマークが表示されています。

そして3つ目は、“味の漬け込み”と“焼き”にこだわった「“ひと手間”のおいしさ」シリーズです。漁場や漁獲後の管理方法、さらにはその魚の脂肪含有率まで調べ、焼き魚に適した原料を選んでいるそうです。

好調セブンを追い上げられるか

イオンがここまで力を入れるのは理由があります。世界の水産物消費量が年々増えている一方で、日本国内での消費量は過去20年間で35%も減少しています(農林水産省調べ)。この状況を反映するように、イオンでも魚介類の売り上げはグループ全体では苦戦していました。

そんな水産物市場の中で、近年、売り上げを急速に伸ばしている商品があります。魚総菜のレトルト商品です。

コンビニ各社が中心となって展開しているこの商品は、魚を食べる際、手間になる「骨」と「生臭さ」をあらかじめ取り除き、気軽に食べられるようにしたことで大ヒットしました。イオンの調査によると、その食卓出現率は2013年からの4年間で約3倍に伸びているといいます。

実際、コンビニ大手のセブン&アイ・ホールディングスが「セブンプレミアム」で展開する魚総菜シリーズは、2017年度の年間販売数が5,000万食を突破するなど、好調な売り上げをみせています。

イオンもレトルト魚総菜にまったく取り組んでいなかったわけではありません。ウナギの代用品として「骨取りさばの蒲焼」をレトルト総菜商品として展開するなど、個別企画商品として販売していました。今回、その消費者ニーズの高さを受け、トップバリュ商品シリーズとして大々的な一斉展開を開始したのです。

 イオン葛西店内に設けられた専用コーナー(10月16日編集部撮影) 

消費者の反応は?

イオンリテールの松本金蔵・水産商品部長は「われわれの強みは、商品数と原料(魚)の調達力です。脂のノリやサイズ、旬の時期に非常にこだわっています」と自信をみせました。販売目標は年間1,000万パック。来年の春にはさらに新商品が投入できるよう、開発を進めているそうです。

お披露目会では、店舗に来場した一般客にも試食品が振る舞われました。試食をした主婦に話を聞くと、「とてもおいしい。特にサバは下手に調理すると(食中毒などに)あたっちゃうから、しっかり煮てあるのはうれしい」と反応は上々のようです。

イオンが本腰を入れ始めたことで、今後はレトルト魚総菜の市場でも激しい商品開発競争が巻き起こる可能性があります。いずれにせよ、消費者にとっては食卓の選択肢の幅が広がることになるのは間違いなさそうです。

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