はじめに

女性の犯罪被害は、強姦などの性的暴力、身近な人からの身体的暴力など届け出自体をためらうケースが多いと言われています。

万が一、そのような被害に遭った場合、誰に相談しどこに届け出たらよいのか、被害者の心情を配慮してもらえるのかなどに関して、シティ総合法律事務所の奥野舞弁護士にご解説いただきました。


「性犯罪」被害に遭った場合にどうすればよいか

女性が被害に遭う割合が高い犯罪類型として、「強制わいせつ」「強姦」などのいわゆる性犯罪が挙げられます。

一方で、性犯罪は、被害に遭った方が警察に被害を届け出る割合が少ないというデータがあります(平成24年度「犯罪白書」犯罪被害についての実態調査)。

その原因は大きく2つあります。

1つ目は、誰に何を相談したらよいのかわからなかった、という点。
2つ目は、相談すること自体が被害を思い出させることにつながり、被害の届出を断念する方が多い、という点です。

1つ目の原因については、もしこの記事を読んでいる方で、ご自身が犯罪被害に遭ったという方や、周囲で被害に遭ったという方がいらっしゃれば、まずは弁護士に相談をしてみてください。

全国には、犯罪被害者支援活動を行っている弁護士が大勢いますので、インターネットで、例えば「犯罪被害者支援 弁護士」といったキーワードで検索してみると、支援弁護士や、支援弁護士が関与している支援団体のホームページにアクセスすることが可能です。

「自分だけがつらい思いをしている現状はおかしい」「被害に対する謝罪を受け、少しでも傷ついた気持ち回復したい」「加害者にはきちんと責任を取ってほしい」「自分の気持ちを整理して前向きになるために、何かできることはないだろうか」…などの気持ちになったときは、まずは弁護士に相談をしてみてください。

被害相談の不安を解消するために

特に性犯罪の被害に遭われた女性は、被害を受けた事実そのものを思い出すことがつらく、誰かに話してみようという気持ちにすらなれず、被害以来、男性と顔を合わせることにも抵抗を感じる方もいらっしゃると思います。

もし、弁護士や支援団体などの各種相談窓口で、犯罪被害に遭った事実を話す際には、「異性には話しづらいので、女性の担当者がいいです」と申し出てみることをおすすめします。

法律事務所や支援団体の体制によっては、女性の被害者に対する支援体制が必ずしも完璧とはいえない場合もあります(そもそも男性しか担当者が所属していないなど)。

しかし、犯罪被害者支援に力を入れている弁護士は、せっかく勇気を持って相談に来られる方については、できる限り負担のないような環境でお話をしてもらいたいと考えていますから、相談時のご要望があれば遠慮なく伝えていただくべきと思います。

犯罪被害を警察に届け出たらどうなるか

警察に犯罪被害を相談した後は、どのような流れになるのでしょうか。

①警察署での被害に関する話の聞き取り



②警察署に「被害届」や「告訴状」を提出



「刑事事件」として、捜査開始

↓〔この間に一通りの捜査を終える〕

③警察署から、検察庁に事件の主担当が変わる(「送致」と言います)



④担当の検察官(検事)が、犯人の処分(正式な裁判にするか、罰金を科すかどうか)を決定する

「刑事事件」にする場合に考えるべきこと

もしあなたが、警察に犯罪被害を届け出て、捜査が進み、加害者について裁判が開始されることになったとします。

その場合、裁判は誰でも傍聴自由となっていますから、「〇〇さんが、いつ、どこで、性犯罪の被害に遭った」ということが、裁判の中で読み上げられるということになれば、自分の名前や居住地が公になってしまいます。

ただ、心配はいりません。刑事裁判では、特に性犯罪の被害者について、検察官に申し出ることによって、被害者の住所や名前をはじめとした、被害者を特定する情報が、裁判の場で公にならないよう、取扱ってもらえます。

例えば、検察官が刑事裁判で何かしらの書面を読み上げるとき、本名に代えて「A子」などの仮名を使ったりします。また、あなたが刑事裁判中に、被害者として証人尋問を受けることになった場合も、傍聴人や被告人との間についたてを設けたり(これを「遮へい措置」といいます)、法廷とは別の部屋で尋問を受けたりする(これを「ビデオリンク方式」といいます)こともできる制度があります。

なお、遮へい措置やビデオリンク方式は、民事裁判において加害者に対して損害賠償請求をする際にも、利用することができます。

犯罪被害者として裁判の情報が知りたいとき

被害申告の結果、加害者について裁判が開かれることになったとします。しかし、被害者は、原則として、加害者を裁く裁判に出席しなければいけないわけではありません。

実際に犯人がいつ起訴され、判決が出て、いつから普通の暮らしを始めるのか、まったくわからないのでは、不安になってしまうでしょう。そうした場合は、被害者は警察や検察庁に対し、加害者の捜査・処分状況、裁判の日程や裁判結果について、通知を求めることができます。

[PR]NISAやiDeCoの次は何やる?お金の専門家が教える、今実践すべきマネー対策をご紹介