はじめに
納得できる最後の病院選び
――何をして妊娠・出産まで至ったのですか?
妻 :再度、病院を変えて、体外受精をもう1回することにしました。今度こそ、ダメだった時に納得できる「終われる病院」をと思っていたら、大阪に男女一緒に治療できる日本初の病院ができたと聞いて……。実家が関西だったので診断だけでもと行ってみたら、私に、不育の原因の一つ、抗リン脂質抗体症候群(血液が固まりやすい)が判明したんですね。「このままではまた流産する」と言われました。
最初は大阪まで通うのは無理だと思いましたが、実家に協力してもらい、移植周期と採卵周期に実家に2ヶ月半滞在して、こちらと行き来する治療を開始しました。
夫 :血液凝固を防ぐヘパリンの入った溶液の中で受精卵を育てるんです。私はこちらで朝一にスクリーニングした精子を新幹線に乗り、当日中に大阪に持ち込み、受精させる段取りにしました。でも、その直前に自然妊娠していることがわかって(笑)。不思議ですね。
――会社には、不妊治療のことは伝えていましたか?
夫 :双方の親には実家から通うなど金銭的な面もあったので、報告はしました。でも、会社にもそのほか周囲にも相談はしませんでしたね。手術の日は欠勤にしました。知られたくないのも多少あったと思います。
原因は一つではない場合も
――男性不妊に悩む人にアドバイスを。
夫 :精索静脈瘤などのちょっとした手術で治ってしまうものなら、やったほうがいいと私は思いました。不妊というと、男性には問題がなく、できることもないように誤解されがちですが、できることはあります。
妻 :不妊というのは、うちのように、男女どちらかに原因が偏っているわけではなく、両方に相応に原因がある場合が少なからずあります。だからこそ、常に2人で向き合うことが大事だと思います。
Bさんご夫婦は、前回のAさんご夫婦とは2つの点で異なります。開腹手術を選んだこと、親以外の周囲にはことさらオープンにはしなかったことです。開腹手術は、やはり予後の負担は多少大きいようです。
また、周囲にオープンにしないことによるデメリットも確かにあります。Bさんのように有給にできず、欠勤にせざるをえないなどです。
一方で、言いづらい気持ちがあったり、必要性を感じないなら無理にオープンにすることもないという良い事例でもあるでしょう。心理的なストレスは不妊治療の大敵。男性不妊も、女性と同様、男性自身はもちろん夫婦・カップルにとって重荷にならない方法を探るべきです。