はじめに
2017年5月、将棋ソフトのPonanza(ポナンザ)が佐藤天彦名人に勝利したニュースは、人間がAI(人工知能)に勝てなくなる時代の幕開けを伝える象徴的な「事件」でした。
その「事件」よりも前、既に野村総合研究所は、英オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授らとの共同研究で、日本の労働人口の約49%が就いている職業がAIやロボット等で代替可能と推計する結果を発表していました。
もはやSFの世界ではなくなったAIと人間との共存社会。仕事と家庭の両面において、深く現実社会と関わる“働く主婦層”の目には、AIの発達はどのように映っているのでしょうか。
AIの認知度96.4%
しゅふJOB総研で、働く主婦層に「あなたはAI(人工知能:人間のような知能を備えたコンピューター)という言葉をご存じでしたか」という質問をしたところ、85.3%の人が「言葉も意味も知っていた」と回答しました。
有効回答数787名
言葉は知っているものの意味までは知らなかった人を合わせると、認知率は96.4%に及びます。AIという言葉は、既に働く主婦層の間で一般用語として浸透しているようです。
AIは脅威?それとも・・・
続いて複数回答にて、「最近では将棋や囲碁のプロ棋士に勝利するほどの能力を持つAIも登場しています。AIの発達は、あなたの仕事環境にどのような影響を与えると思いますか」と質問したところ、最も多かった答えは「仕事が効率化され、仕事がしやすくなる」で51.5%。AIの発達をポジティブに捉えている“楽観派”が過半数を占めました。
有効回答数787名
ところが2位には「AIに仕事を奪われて、就職先が減る」という悲観的な選択肢が入り43.3%。グラフを見てもわかる通り、楽観派(仕事が効率化され、仕事がしやすくなる)と悲観派(AIに仕事を奪われて、就職先が減る)の比率に大きな差はありません。
楽観派(仕事が効率化され、仕事がしやすくなる)のフリーコメントには、「人間では間違ってしまう事が、AIなら間違わずに効率よく作業が進んで、残業も減っていくと思う(40代:パート/アルバイト)」「AIの不得意な点は人間がカバーするので、脅威ではない(40代:パート/アルバイト)」「AIにはできない人間性が必要とされる分野と主婦の感性には共通点もあるのではないかと思います(40代:派遣社員)」などの意見が並びます。
一方、悲観派(AIに仕事を奪われて、就職先が減る)からは、「発達しすぎて、人間の仕事がなくなってしまうと思う(50代:派遣社員)」「前職は経理、今は事務職で働いているけど、10年20年したら確実に仕事が無くなると怯えている(30代:パート/アルバイト)」「恐い。とても恐怖です(40代:今は働いていない)」など、楽観派とはかなり趣の異なる意見が並びます。
AIの影響は、働く主婦によって全く異なる印象を与えていることがわかりますが、もう一歩踏み込んで調べてみたところ、楽観派(仕事が効率化され、仕事がしやすくなる)の3割強が、「AIに仕事を奪われて、就職先が減る」という悲観的な項目も選択していることがわかりました。AIの発達に対して、期待と不安が同居した状態の人も一定数存在しているようです。