はじめに
1枚の紙幣が流通する期間はどれくらい?
紙幣は紙ですから、どんなに丈夫に造られていても、いつかは破れたり、シワになります。しかし、お店で買い物をしたとき、ATMでお札を引き出したとき、そのような紙幣に出会うことはほとんど無いですよね。
紙幣は、破れがあったりシワが多いと、自動販売機やATMなどで正しく処理できなくなります。そのため状態の悪いものは日本銀行に回収され処分されているのです。
ATMなどに集まった紙幣は、まずは各銀行で仕分けされます。状態の悪いものは日本銀行に送られ、再度仕分けされます。状態により処分か銀行に戻すか、ここで判断されます。ちなみに偽札かどうかもこの段階で厳しくチェックされるそうです。
処分と判断されたものは、復元されないよう 細かく裁断されます。
では、紙幣が処分されるまでの寿命は一体どれくらいなのでしょう。利用頻度の高い千円札や五千円札は、わずか1~2年ほどと言われています。一万円札でも4~5 年程度なのだそう。硬貨が何十年も使われることを考えると短い期間です。
「昭和五十二年」の刻印がある10円硬貨。
紙幣に記された記番号に同じ組み合わせはないの?
現在発行されている紙幣には、数字とアルファベットが組み合わさった記番号が印刷されています。これは紙幣の背番号のようなもので、同じ種類の紙幣の中には、同じ組み合わせは存在しません。もし同じ組み合わせがあれば、それはどちらかが偽札ということになります。
番号は、「アルファベット1文字もしくは2文字+数字6桁+アルファベット1文字」という組み合わせで振られています。ただし、「I(アイ)」と「O(オー)」は、それぞれ数字の1(いち)と0(ゼロ)に似ているため使われていません。この組み合わせは、全部で129億6千万通りあり、一巡するまでには、製造枚数の多い千円札でも7〜8年はかかるそうです。
もしも番号が一巡した場合はどうするのか。そのときはインキの色を変えます。現在発行されている紙幣では、黒色、褐色の順に変わっています。
先述で同じ番号は存在しないと紹介しましたが、色違いという例外は存在するかもしれません。ただし紙幣の寿命が長くて4~5年程度と考えると、その可能性は限りなく低くなります。
記番号の色が黒色と褐色の例
ちなみに国立印刷局では、印刷ずれなどで欠番が生じた場合、その番号を印刷し直して納品していますが、諸外国の中には欠番のままにしておく国も多いのだとか。というのも、番号が揃っていなくても大きな問題はないため。わざわざ手間をかけて番号を揃えることはしないようです。そこをきちんと揃えるところに、日本人の几帳面な性格が表れていると言えるかもしれません。
国立印刷局では紙幣以外も製造している!
紙幣を印刷しているのは国立印刷局という独立行政法人ですが、そこで製造されているものは紙幣だけではありません。紙幣を印刷する高度な技術を使い、様々なものを製造しています。
例えば、海外渡航に必要なパスポートは国立印刷局で製造されています。
そのほか、切手や印紙、地方自治体等で使用されている収入証紙なども国立印刷局で製造されており、いずれも偽造を防ぐために様々な工夫が施されています。新しく成立した法令などを知らせる官報も、行政機関の休日を除く毎日、国立印刷局で編集から印刷及びインターネット配信を行っています。
また「すき入れ」という、紙の厚さを変えることで、光にかざしたときに模様が浮かび上がる技術のうち「黒すき」を用いた紙は、政府の許可がないと製造できないため、それを活かした美術品の製造も行っています。
紙幣製造の技術は、今も進化を続けており、2014(平成26)年には五千円札のホログラムが改良されています。そして、記番号の色についてご紹介しましたが、千円札・五千円札・一万円札の3種類が、現在2色目に突入しています。黒色よりも褐色のほうが多くなってきているようですが、手元に紙幣があればぜひチェックしてみてください。黒色の番号があったら、ラッキーな気分になれるかも?
文=南雲恵里香(風来堂)