はじめに

投資家が株式投資をするうえで大きな判断材料となっているIR資料。しかし、約3,700社ある上場企業の中でも、その内容は玉石混交で、上場企業として最低限の情報開示しかしていない企業も数多く存在します。

こうした状況を変えようと、日本証券アナリスト協会のディスクロージャー研究会が毎年10月に選定・表彰しているのが「証券アナリストによるディスクロージャー優良企業」です。1995年から開始しており、今年で24回目になります。

プロの目から見た優良IR企業の開示姿勢は、個人投資家にとっても今後の投資判断の参考になるはず。いったい、どんな会社が高い評価を受けているのでしょうか。


評価対象は全上場企業の1割未満

本題に入る前に、まず選定の基準を押さえておきましょう。

評価対象は業種別部門、新興市場銘柄部門、個人投資家向け情報提供部門の3部門に分けられています。それぞれにディスクロージャー資料の利用者である投資家の属性も、求めている情報も、異なるからでしょう。

対象企業数は、業種別部門が東証1部上場の17業種286社、新興市場銘柄部門が27社、個人投資家向け情報提供部門が28社。約3,700社ある上場会社の中で341社ですから、上場会社全体の1割にも満たない計算です。

それでは、その1割弱の企業はどうやって選ばれているのでしょうか。この賞は、証券アナリストが記入したスコアシートを集計して決定しています。

スコアシートは各業種ともに、

(1)経営陣のIR姿勢、IR部門の機能、IRの基本スタンス
(2)説明会、インタビュー、説明資料等における開示
(3)フェア・ディスクロージャー
(4)コーポレートガバナンスに関連する情報の開示
(5)各業種の状況に即した自主的な情報開示

で構成されています。

アナリストの目に止まった企業が対象

今回スコアシートに記入したアナリストは、延べ458名。「延べ」というのは、1人で複数企業のスコアシートを記入している場合があるからです。

スコアシートへの記入ができるアナリストは、証券アナリスト経験3年以上で、現在担当しているセクターをおおむね2年以上担当、かつ記入対象の企業と過去1年以内に4回以上接触していることが条件になっています。

そもそも、アナリストがカバーしている企業、つまりアナリストの目に止まるような業績を上げ、かつそれをアピールしている企業でなければ、スコアシートの記入対象にすらなりません。

アナリストは投資対象になり得る企業を目を皿のようにして探していますから、そのアナリストの目に止まらない企業が圧倒的多数を占めているということなのです。

特定の会社が何度も受賞

それでは、本題に入りましょう。

業種別部門は全部で18業種に分かれていて、食品部門のアサヒグループホールディングスは2年連続14回目、機械部門の小松製作所は8回連続12回目、エネルギー部門の東京ガスは12回目、コンピューターソフト部門の野村総合研究所は2年連続10回目と、特定の会社が何度も受賞しています。

新興市場銘柄部門では、初受賞がハーモニック・ドライブ・システムズのみ。プロトコーポレーションが8回目、セリアが5回連続で5回目となっています。

個人投資家向け情報開示部門は、業種別部門の上位企業の中から個人投資家向けの説明会を開催しているところを選んで評価対象にしているからか、日本電産(11回目)、三井物産、KDDI(ともに初受賞)と、大企業が顔をそろえました。

時価総額が小さくて、アナリストがカバーしていない新興銘柄の中にも、個人投資家向け説明会を積極的に開催しているところは少なからずありますが、そういった企業は評価対象にはなっていません。

このほか、「高水準のディスクロージャーを連続維持している企業」と「ディスクロージャーの改善が著しい企業」も称賛状贈呈の対象になっています。

「高水準のディスクロージャーを連続維持している企業」は、直近3回連続して第2位または3位の評価を受けた企業が選ばれています。選ばれたのは、建設・住宅・不動産部門の大和ハウス工業、鉄鋼・非鉄金属部門の丸一鋼管、機械のダイキン工業、運輸のJR東日本の計4社です。

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