はじめに

3ヶ月ごとに発表される四半期決算発表において、毎回注目を集めているのが日本電産です。小型モーターを中心とした大手電子部品メーカーで、世界的に有名な京都発祥のハイテク企業群の一つですが、国内外のメーカーを数多く買収していることでも知られています。その日本電産の決算発表が毎回注目されているのは、なぜなのでしょうか。


発表時期が早く業績トレンドの指標に

9月末に四半期・期末を迎える決算発表予定企業は約3,000社あります。東証の開示ガイドライン(45日ルール)により、ほとんどの企業が11月15日までに発表される予定ですが、日本電産は10月23日に発表しています。23日までの発表予定企業数はわずか29社で、週末26日まででも累計197社に留まっており、全体の約7割は11月以降の発表予定です。日本電産は毎回、期末翌月25日前後までに発表しており、いつも早いのが第一の特徴です。

日本電産以外にも翌月25日までの発表企業はいくつかありますが、実はそのほとんどが時価総額1,000億円未満のいわゆる小型株です。機関投資家や海外投資家の運用対象は時価総額が数千億円以上、特に同1兆円以上の大型株が中心なので、彼らにとって日本電産は、毎回「決算発表のトップバッター」なのです。

注目されるのはタイミングだけではありません。日本電産の主力製品である小型モーターはPC等のHDDに使われていて世界トップシェアですが、それ以外にも冷却ファン、自動車部品、家電、医療器具、産業用ロボット向けなど様々な分野向けの小型モーターや関連製品を作っており、生産工場も販売先も世界中に広がっています。

日本を代表するハイテク産業の業績トレンドを見る上でも、あるいは米国や中国など世界市場の製造業動向を見る上でも、日本電産の決算内容はとても参考になるのです。それが、他の大企業より数日早く発表される訳ですから、毎回注目せざるを得ないということになります。

業績修正・株主還元でも注目されやすい

さらに日本電産は、業績予想修正や株主還元にも積極的な企業としても注目されています。上場企業は、売上高で10%以上、各利益で30%以上の増減があった場合には、会社予想を修正しなくてはいけません。ところが日本電産は、変化幅がこの基準より小さい場合でも、業績予想を修正することが多い傾向にあります。

しかも多くの企業が、第1四半期と第3四半期の発表時には修正を見送ることが多いのに対し、日本電産は第1・第3四半期でも、こまめに予想を修正することが多いのです。そして増益の場合は、増配に踏み切ることも多く、こうした点からも「今回の決算は変化あるかな?」と注目を集めやすいのです。

予想据え置き&増配で株価はプラス反応

日本電産は23日引け後に第2四半期決算を発表しました。翌24日の同社株価は前日比+1.6%でした。24日の株価(前日比)は日経平均+0.4%、TOPIX+0.1%、業種別インデックスで同社の属する電気機器は+0.0%、近い業種として精密機器+0.2%、機械-0.8%。いずれの数値と比較しても、発表翌日の同社株への反応は相対的にプラス反応だったようです。

決算内容を見てみましょう。アナリストや機関投資家は営業利益を重要視します。そして前期比の増減よりも、会社予想やコンセンサス予想(注)との比較を確認します。営業利益は982億円で会社予想(950億円)を上回りました。当期純利益785億円も会社予想(720億円)を上回っています。精密小型モーター、車載、家電・商業・産業用、機器装置、電子・光学部品の各部門がいずれも前年同期比増収ですし、営業利益も5部門中4部門が同増益です。

一見、順調そうに見えますが、会社は通期予想を据え置きました。数字だけみると「上期は会社予想を上回ったが、下期は会社予想を少し下回る可能性」と見ることもできますが、米中通商摩擦の影響など世界経済に不透明感がある中で、「下期の変動要因が大きいので、通期予想修正を見送った」ということなのかもしれません。一方、配当予想については、期末配当を5円増配し、通期予想100円→105円としました。

これから数週間以内に、証券各社のアナリストが今回の決算を踏まえたレポートを発表し、必要であれば業績予想を見直します。そして修正値がコンセンサス予想に反映されます。そうして市場の評価や次の決算への期待値が定まっていくことになると思います。今後、コンセンサス予想や投資判断が変化するかどうかもチェックすると参考になると思います。

ちなみに、日本電産と同様に決算発表が注目される企業に安川電機があります。同じようにハイテク企業で時価総額1兆円クラスであることに加え、2月期決算のために3月期決算企業より発表タイミングがもう1段早いことが注目される理由です。

今回は10月10日に発表し、増収増益決算だったのですが、会社予想を増収増益予想のまま増益幅を縮小させました。すると翌日の同社株価は前日比-6%の下落でした。短期的に下方修正が嫌気された可能性があります。安川電機と比べてみると、日本電産の場合は、増配したことに加え、下方修正をしなかったことも好反応につながった可能性があるでしょう。

(注:コンセンサス予想は証券会社各社のアナリスト予想平均値です。ただし、データ会社により集計方法が異なっており、同じ銘柄に対する数値が異なることがあります。)

(文:松井証券 ストラテジスト 田村晋一  写真:ロイター/アフロ)

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