11月2日に発表された米10月雇用統計は、失業率が予想通りの3.7%となりました。非農業部門就業者数は予想中心値前月比+20万人に対し同+25万人と強い内容となり、3ヶ月平均の雇用者の伸びも毎月+20万人台を回復し、米雇用の強さを確認する形となりました。

そして本日(11月6日)投票日を迎える米中間選挙、その後のドル円相場はどのように動きそうなのでしょうか。先月からの動きを振り返りながら、今後の相場を考察します。


米10月雇用統計は米雇用の強さを確認

注目の平均時給は前年比+3.1%と予想通りではありましたが、数字だけ見ると高い上昇率に見えるかもしれません。前月比でみると+0.2%という違和感のない数字であったにもかかわらず、前年比でみると2009年4月以来の+3.1%と高い数字になった背景には、ハリケーンという特殊要因があったと考えられます。

昨年9月はハリケーン来襲を受けた小売り・レジャーなどサービス業の分野において、低賃金層の雇用が減少したことが影響し、平均時給が押し上げられましたが、翌月(昨年10月)は低賃金層がいっせいに職場に復帰したことが影響し、平均時給が大きく切り下がりました。その切り下がった低い数字である昨年10月分との比較になったため、今回の10月分は反動で高く出たと考えられます。


米中間選挙が終われば、次の材料は12月の米利上げ

先月の記事(10月16日付「1ドル=111円台に、「ドル円相場」はこの先どうなる?」)で筆者は、「米中間選挙までは調整色の強い相場(円高、株安、米金利低下)が続くと予想していますが、選挙の結果がどちらに転んでも、選挙後の相場は『行き過ぎたリスクオフ相場の巻き返し局面(円安、株高、米金利上昇)』になる」と述べました。

早い時期から、米中間選挙に対する市場の見方は「米上院は共和党が過半数を維持、米下院は民主党が過半数を奪取」というものでした。そのため、「米下院で民主党が過半数=トランプ大統領の弾劾訴追の可能性」、あるいは「米議会のねじれ状態=トランプ大統領の政策の滞り」という解釈が広がっており、「米中間選挙=リスクイベント」という位置づけであったと思われます。

このことから先月の時点では、9月の米FOMCでの利上げ、あるいは10月5日の強い内容になるかもしれない米雇用統計が終われば、11月6日の米中間選挙に向けて利食い(株売り、ドル円の売り)をしようと思っていた市場参加者が大半だったのではないか、と筆者は見ていました。つまり、ポジション調整相場です。

それが、サウジアラビア関連報道や中国の外貨準備の減少、トランプ大統領のFRB批判発言、ムニューシン米財務長官の為替に関する発言・・・といった先行き不透明材料・リスクオフ材料によって下落の値幅が増幅されてしまった可能性があります。

一部では、2月のVIXパニック(VIX指数急伸を受けた株式の暴落)を引き合いに出して、下落を煽るコメントも数多く見られました。円高論者が多すぎた2018年でしたので、円高を煽る市場関係者が多いのはやむを得ません。しかし、レバレッジ系ファンドのVIX指数のポジションとVIX指数の動きを見ると、2月のようなパニックには程遠いことが伺われます(売り持ち解消を急いでいない。瞬間高値は許容範囲)。

したがって、筆者は12月米利上げに向けて、市場のテーマは米景気指標と米利上げ軌道に回帰していき、ドル円は年内に1ドル115円水準を上抜けすると予想しています。

一抹の不安があるとすれば、トランプ大統領がセッションズ米司法長官を解任し、さらにロシアゲートを捜査しているモラー特別検察官を解任するかもしれないということです。セッションズ司法長官解任は、ウォーターゲート事件後に起きたニクソン(当時)大統領の土曜の夜の大虐殺(コックス特別検察官解任・リチャードソン司法長官の辞任・ラッケルズハウス司法次官の解任)を彷彿とさせ、リスクオフ相場(円高・株安・米金利低下)に拍車を賭ける可能性があります。

いずれにしても、米中間選挙後もトランプ大統領に振り回される相場はしばらく続きそうです。

(文:大和証券 チーフ為替ストラテジスト 今泉光雄  写真:ロイター/アフロ)