はじめに

昨年末、株式市場が残すところあと4日に迫った12月27日、日経新聞の一面にある記事が掲載されました。

「東芝、特損1000億円規模 今期、米原発の資産価値減」。この突然のニュースを受け東芝株は急落、あわやストップ安という水準まで売られました。この日は引けにかけて買い戻しも入り、やや値を戻して取引を終えましたが、この暴落は始まりにすぎませんでした……。

トランプ相場に乗り上昇基調だった東芝株は、この日からわずか数日で株価が半分に下落。12月29日には一時ストップ安近くまで値が下がり、一時時価総額が1兆円を割り込むことになりました。東芝にいったい何があったのか振り返ってみましょう。


東芝の業績は絶好調だった

まず、この特損のニュースが出るまでの株価の動きを見てみます。

※ヤフーファイナンスアプリより

惚れ惚れするような動きです。1月の155円を底値にジリジリと上がり続け、12月中旬には475円となんと3倍も上昇しました。

この最大の要因は、業績の回復が鮮明に示されていたからです。主力の半導体メモリが好調で、今期は2年ぶりに大幅黒字予想を立てていました。強烈なのが8〜11月まで4ヶ月連続で業績の上方修正をしていたことです。

東芝は一昨年の不正会計問題から心機一転、半導体市況の急回復や円安という援軍を受け、改革は着実に進んでいた、はずでした。

突然の特損、さらに数千億円まで膨らむ可能性も

そんな業績&株価急回復の最中出てきたのが、冒頭の特損のニュースです。

寝耳に水とはこのことで、株価は驚きをもって急落しました。ただし、東芝は今期の最終利益を1450億円と予想していて、特損が1000億円で収まるならなお黒字ということで、市場は比較的冷静に受け止めていました。

しかし、その日の夕方6時。東芝が緊急記者会見を開きました。綱川社長が発表したのは、原子力事業で数千億円まで損失が膨らむ可能性があることを明らかにしたのです……。こうなると話は変わります。

今期絶好調から一転、最終赤字に転落する公算が大きいとし、さらに数千億円の金額次第では、東芝は最悪の最悪の場合、上場廃止すらあり得るかもしれないというのです。

東芝株はその後わずか3日で半値近くに下落

会見の翌日、東芝株には売りが殺到しストップ安まで叩き売られ、翌々日もストップ安直前まで売り込まれました。わずか3日で東芝の株価は、半額シールが貼られたかのように半値近くまで大暴落してしまいました。

※ヤフーファイナンスアプリより

株価は5月の水準まで戻り、半年超かけた上昇分を一瞬にしてなかったことにする無慈悲なチャートです……。

なぜこれほどまでに市場がシビアな反応を示したのかというと、「債務超過」からの「上場廃止」という最悪のシナリオがよぎったからです。

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