はじめに
第二の注目語はゲルマン語の「bank」
さて話を戻しましょう。「銀行のbank、長椅子のbench(ベンチ)、宴会のbanquet(バンケット)が、同じ語源を持つ別の言葉」だったことを紹介するのが、本稿のテーマでした。
すでにちらっと触れた通り、bankの大本の語源はゲルマン語のbankという言葉。これが本稿における二番目の注目語となります。低い台やベンチなど(つまり細長い台状のもの)を意味する言葉です。この言葉を出発点にして、英語のbank以外にもさまざまな言葉が誕生しました。それが英語のbenchやbanquetなのです。
まずbenchの場合は、ゲルマン語のbankが古英語(5世紀後半〜12世紀)に流入してbencとなり最終的にbenchとなりました。もちろんbenchは「長椅子」の意味ですね。
またbanquetの場合、ゲルマン語のbankがイタリア語のbancoになり――ここまではbankの語源と一緒の流れですよね――長机からの連想でbanchetto(宴会)という意味のイタリア語ができ、これが中期フランス語に同じ綴りで伝わり、最終的に英語のbanquetになったのです。
このように長椅子のbenchも、宴会のbanquetも、銀行のbankと同じ語源を持つ言葉だったのです。
土手のbankも仲間
こうやって語源を探索してみると、bank、bench、banquetには共通のイメージがあることがわかります。いずれも「細長い台状のもの」が絡んだ言葉なのです。
そういえば英語のbankには「土手」という意味もありますよね。じつはこれもゲルマン語のbankが語源である言葉の仲間なのです(ただし土手を意味するbankは、英語に至る伝搬経路が銀行のbankとは異なる)。この土手も「細長い台状のもの」だといえます。
今度、銀行窓口でカウンターを見る機会があったら、ベンチや長机や土手のことも思い出してみると、面白いかもしれません。