bankの語源:銀行とベンチの間にある共通点
お金のことば48:bankの語源
日本独自のカードゲーム「歌留多(かるた)」。医師が記入する診療録である「カルテ」。そして、手札などを意味する「カード」。これらはそれぞれ別の言語から伝わった外来語なのですが、実はいずれも「同じ語源」を持っています。ちなみに歌留多はポルトガル語のcartaが語源。カルテはドイツ語のKarteが語源。カードは英語のcardが語源。そしてこれらの語源をもっと辿ると、いずれもラテン語のchartaやギリシャ語のchártēsにいきつきます。そして、その意味するところは「1枚のパピルス紙」のことだったのです。一方、銀行を意味するbank(バンク)という英単語にも同じような事情が隠れています。具体的には銀行のbank、長椅子のbench(ベンチ)、宴会のbanquet(バンケット)が、同じ語源を持つ別の言葉なのです。今回は英語bankの語源と、その背景にある銀行史の一場面について紹介することにしましょう。
ウォール街、シティ、兜町の歴史に潜む「戦」の記憶
お金のことば47:金融街の語源
英国のシンクタンクZ/Yenなどは、年2回、世界金融センター指数(Global Financial Centres Index)を公開しています。これは世界100の金融センター(ウォール街を擁するニューヨークのような地域のこと)が持つ競争力を指標化したものです。その最新版(2018年9月発表)によると、世界で最も競争力のある金融センターは、1位から順にニューヨーク、ロンドン、香港、シンガポール、上海、東京だったのだそうです。一般に世界3大金融街といえば、ウォールストリート(ニューヨーク)、シティ(ロンドン)、兜町(かぶとちょう・東京)辺りを思い出しそうなところですが、近年ではその認識は当たらないのです。とはいえ日本人にとって、ウォールストリート、シティ、兜町は馴染みの深い金融街の名前ではないでしょうか。実はこれらの地区のいずれにおいても、その語源に興味深い物語が隠されています。そしてその物語には、ある共通点も存在するのです。今回は「金融街の語源」を掘り下げてみましょう。
対中ODAが終了…ところでODAでよく聞く円借款って何?
お金のことば46:ODAと円借款
2018年10月25日、安倍首相は訪問先の中国において「対中ODAの終了方針」を明らかにしました。ODA とは、おおまかに言えば「ある国が途上国に対して行う援助」のことを指します(詳しくは後ほど)。日本の対中ODAは、日中平和友好条約の発効翌年(1979年)に開始。一般にこの援助は、中国に対する戦後賠償の意味合いがあるとされています。しかし中国の経済成長とともに、その意義が薄れることに。2007年には新規の円借款(えんしゃっかん=これも後ほど)を終了。そしてこのたび、2018年度の新規分を最後に無償資金協力・技術協力も終わることになったのです。日本の総拠出額は3兆6500億円にのぼります。さてこのニュースを見た皆さんの中には、そもそも「ODAや円借款って何?」と思った人も多いのではないでしょうか。「ODAって何の略なの?」とか「円借款って何?」という疑問を抱いている人もいるかもしれません。そこで今回は、ODAや円借款という言葉の意味について掘り下げてみましょう。
24時間タタカエマスカ?サラリーマンを鼓舞した時代
お金のことば45:経済のバブル語(3)
バブル時代を象徴する「経済関連の言葉」――本稿ではこれを便宜的にバブル語と呼びます――を振り返る記事をお送りしております。今回はその最終回(全3回)です。第1回では経営・労働、第2回では不動産・消費の言葉を紹介しましたが、今回は「恋愛・コマーシャル」の言葉を紹介します。
地上げ屋が暗躍、一億総グルメになった時代
お金のことば44:経済のバブル語(2)
バブル時代を象徴する「経済関連の言葉」――本稿ではこれを便宜的にバブル語と呼びます――を振り返る内容をお送りしております。今回はその第2回(全3回)。第1回では経営・労働の言葉を紹介しましたが、今回は「不動産」と「消費」の言葉を紹介します。
企業が財テクに走り、3Kが嫌われ始めた時代
お金のことば43:経済のバブル語(1)
ここ最近のマスコミでは、バブル時代の文化や社会風俗を振り返る企画をよく見かけます。来年の改元を控え、平成を総括する機運が高まっているのでしょう。そういえば平成は「バブル景気から」始まった時代だったのです。そこで本連載でも、バブルを象徴する経済関連の言葉――ここでは便宜的に「バブル語」と呼びます――を振り返ってみたいと思います。今回はその第1回(全3回)です。
実態と真逆!? 名前だけが強くなる「ベネズエラ通貨」のお話
お金のことば42:ボリバル(後編)
ハイパーインフレと場当たり的な通貨政策の影響で、国際経済における大きな関心事となった通貨、ベネウエラ・ボリバル。その「言語的側面」を分析する記事の後編です。前編ではボリバルという通貨名が、実はベネズエラなどの独立に尽力した指導者シモン・ボリバル(Simón Bolívar、1783年~1830年)に由来していることを紹介しました。今回の後編では、通貨名ボリバルの「正式名称」に注目してみたいと思います。
ベネズエラ通貨「ボリバル」と「ボリビア」を結ぶ偉人
お金のことば41:ボリバル(前編)
本連載では以前、相場暴落で国際的な話題になった通貨・トルコリラについて、その言語的な側面を紹介しました(「言葉の観点」で分析する、トルコ通貨史/通貨単位「リラ」と「ポンド」の意外な関係)。ところで最近危機的な状況にある通貨と言えば、もうひとつ思い出す通貨もあります。それはベネズエラの通貨「ボリバル」(bolívar)。現在この通貨はハイパーインフレの渦中にあります。国際通貨基金(IMF)は、同通貨の今年のインフレ率をなんと100万%と予測しました。ベネズエラは今年8月に「ゼロを5つ取る」デノミネーションを実施したばかりです。経済危機の主因は、石油価格の下落。このため同国の主要な外貨獲得手段である石油輸出が不振にあえいでいる状況があります。最近では同国からの脱出をはかる国民も増えているとの報道もありました(参考:ロイター2018年8月21日「迷走ベネズエラ、デノミや新通貨制度は無意味」)。今回、本稿で取り上げるのは、そんな話題の渦中にある通貨名・ボリバルです。通貨ボリバルを、言葉の側面から徹底的に分析してみることにしましょう。今回はその前編です。
ことわざに登場する「宝」が表しているもの
お金の言葉40:宝のことわざ
ことわざや慣用句の世界には「宝」という言葉がよく登場します。ぱっと思いつくところでは《宝の持ち腐れ》。この表現に登場する「宝」とは、狭義には「経済的価値」を示しているとも言えますし、広義には「何か役に立ちそうな物事」を示しているとも言えます。例えば「技量」でしょうか。せっかく外国語を喋れるという技量を持っているのに、外国に行ったことがないという状況も《宝の持ち腐れ》と言えそうです。このようにことわざに登場する宝物は、単純な経済的価値だけではなく、何か別のものを表すこともあります。そこで本稿では「宝が登場することわざ」を取り上げてみましょう。紹介することわざから、日本語の世界観における「宝物」の姿が見えてくるかもしれません。
通貨単位「リラ」と「ポンド」の意外な関係
お金のことば39:トルコリラ(後編)
相場急落などの出来事で、最近なにかと話題の通貨・トルコリラ。この通貨を「言葉の観点」から分析することでトルコの通貨史を概観します(前編:「言葉の観点」で分析する、トルコ通貨史)。今回は通貨名称にある「リラ」の部分に着目しましょう。ひょっとしたら読者の皆さんの中には、リラという言葉を目にして、トルコではなく「ある別の国」のことを思い出す人もいるかもしれませんね。その辺りの話も含めて、事情を説明してみたいと思います。
「言葉の観点」で分析する、トルコ通貨史
お金のことば38:トルコリラ(前編)
今年8月上旬、トルコリラの暴落という大きな出来事が起こりました。為替相場が米ドルに対して20%も下落したのです。この出来事は、巷間で「トルコショック」とも呼ばれています。その直接の引き金は米国とトルコの関係悪化とされていますが、そもそもエルドアン大統領の強権的な政治姿勢が、相場の重石になっているという指摘もあります。今回、本稿のテーマに据えてみたのは、この「トルコリラ」です。この通貨を「言葉の観点」から分析して、ごく簡単にではありますが、トルコの通貨史を概観してみましょう。今回はその前編です。
アメリカは亜米利加、ではドルを漢字で書くと?
お金のことば37:通貨単位の漢字表記
アメリカを漢字で書くと「米」となります。アメリカの当て字である亜米利加を略して、米と表記するわけです。これと同様に、イギリス(英吉利)は「英」、フランス(仏蘭西)は「仏」、ドイツ(独逸)は「独」、ロシア(露西亜)は「露」と書きます。これらは「何をいまさら」というお話ですよね。ではアメリカなどで使用される通貨単位「ドル」(dollar)は、どうやって漢字で表記するのでしょうか?いまでこそdollarはカタカナでドルと表記するのが普通です。しかし江戸末期から昭和初期にかけて、ドルは漢字で表記された時代もありました。今回は「世界の主要な通貨単位を漢字で表すとどうなるか?」という問題について解き明かしてみましょう。
「元号」で振り返る、日本の経済史
お金のことば36:日本史用語と元号
平成の歴史が終わろうとしています。本連載では前回、元号の話題を紹介しました。過去の改元事例のうち、経済的理由を契機とする改元について探った内容でした。それに引き続き、今回も元号を取り上げたいと思います。テーマは「元号入りの日本史用語」です。日本史用語のなかには、その名称に元号を含む語もありますよね。山川出版社が発行する『日本史用語集』に登場する範囲だけでも、天平文化や元禄文化などの「文化」に関する用語、大化の改新や明治維新などの「政変」に関する用語、明暦の大火などの「災害」に関する用語、大宝律令や明治憲法などの「法律」に関する用語、延暦寺や慶應大学などの「施設」の名称、寛政暦などの「暦」の名称、平治物語などの「著作」の名称など、実にさまざまな用語が登場するのです。歴史的な物事と元号とをセットで覚えられるところは、元号の貴重なメリットかもしれません。そしてそんな元号入りの日本史用語のなかにも、もちろん「経済」関連の用語が存在するわけです。
本当にあった、経済的理由によるレア改元3選
お金のことば35:律令制度と元号
2019年(平成31年)4月30日、約30年にわたる「平成」の歴史が終わります。同日、今上天皇が退位され、その翌日「改元」が実施されるのです。ところで改元には、いまでこそ一世一元(いっせいいちげん=天皇一代に年号を一つだけ用いること)という決まりがあります。しかし長い歴史を振り返ると、改元には実にさまざまな「理由」が存在していました。そのパターンは主に4つ。まず天皇の交代を理由とする「代始改元」(だいはじめかいげん)、吉事を理由とする「祥瑞改元」(しょうずいかいげん)、凶事を理由とする「災異改元」(さいいかいげん)、暦のうえで凶事が起こるとされる区切りの年(甲子・戊辰・辛酉の年、これを三革と総称する)を理由とする「革年改元」(かくねんかいげん)というパターンが存在していたのです。このうち祥瑞改元は、初期の元号で登場するパターン。朝廷にキジが献上されたので改元した(白雉=はくち、650年~654年)とか、縁起の良い雲を発見したので改元した(慶雲=けいうん、704年~708年)とか、天皇が泉に入って健康になったので改元した(養老=ようろう、717年~724年)など、さまざまな吉事が存在しま
現代も使われ続ける“そろばん”が登場する慣用句
お金のことば34:算盤
かつては商売人の必携品であった算盤(そろばん)。電卓やパソコンがない時代にあって、この道具は会計・経理といった作業を行うために欠かせない存在でした。それゆえ言葉の世界でも、古くから“算盤が登場する表現”がたくさん存在していたのです。例えば、社会生活で必要とされるリテラシーを古くから「読み書き算盤」ともいいますし、損得などを事前に十分計算しておくことを「算盤尽く」(そろばんづく)といいます。このような言葉は、算盤の登場機会が減った現代でも現役であり続けています。そこで今回は、算盤が登場する言葉や慣用句を、古い表現も含めてじっくり観察してみましょう。
ギザ十、筆五、硬貨の通称いろいろ
お金のことば33:硬貨の通称
1万円札でいうところの「諭吉」のように、古今東西、紙幣や硬貨には“通称”がつきものです。前回の記事(「諭吉、ウラシロ、ジャイアンツ、紙幣の通称いろいろ」)では“紙幣”の通称について紹介しましたが、今回は“硬貨”の通称を紹介しましょう。また、これに加えて「紙幣と硬貨とで“通称の傾向”に違いはあるのか」という分析もやってみたいと思います。前回と同様、取り上げる硬貨は日本円、米ドル、英ポンドの3種類とさせてください。
諭吉、ウラシロ、ジャイアンツ、紙幣の通称いろいろ
お金のことば31:紙幣の通称
米ドルの紙幣を「greenbacks」(グリーンバックス)と呼ぶことがあります。これはかつてドル紙幣の裏面が緑色で印刷されていた名残なのだそう。このように紙幣は通称で呼ばれる機会も多いわけです。そこで今回は「紙幣の通称」のいろいろについて紹介してみることにしましょう。なお今回紹介する通称は、日本円、米ドル、英ポンドの3通貨のみとします。
ことわざで振り返る「日本人の商人観・商売観」
お金のことば31:商いのことわざ
この連載では以前、お金にまつわる「ことわざ」を紹介したことがあります。《地獄の沙汰も金次第》《金(かね)の貸し借り不和の基(もと)》などのことわざを例にして、ことわざが伝えようとする「お金との付き合い方」を紹介した内容でした。今回の記事は、ことわざシリーズの第二弾。今度は商い(あきない)に関連することわざを紹介してみたいと思います。紹介する数々のことわざから、日本人の商人観・商売観が浮かび上がってきます。