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戻るか米国株のブル相場、カギは企業業績の継続性

業績堅調でもモメンタム低下の今

11月の世界の株式市場は、懸案の米中間選挙を無難に乗り切り、ひとまずは落ち着きを取り戻したかに見えました。しかし、米国の業績不安や中国の景気減速懸念から売られると、再び不安定な相場展開を強いられています。年末に向けてどのような動きが予想できるのか、米国株の現状と見通しを考察してみましょう。


グローバル株式の上昇は米国株の安定ありき

年末に向けての相場展開を占う上では、米中貿易問題や英国のEU離脱問題など、不透明要因の解消がカギを握ると見られますが、2019年を視野に入れた場合、米国株のブル相場の継続性、ひいては米国企業の好調な業績推移の継続性が重要となります。この前提が崩れると、日本株をはじめグローバル株式の株価上昇が見通しづらくなるためです。

結論から言えば、現時点で米企業の業績悪化を断定できるほどの確証はなく、良好なマクロ景気を背景に、堅調な業績が続くと考えるのが基本シナリオです。楽観が禁物であることは確かですが、その一方で極端な悲観もまた収益機会を逃すことにつながります。

したがって、各種の不透明要因をこなした後の展開として、引き続き、米国株重視のスタンスで投資戦略の構築を見据えたいところです。米国株が安定を保てば、業績・バリュエーション面で優位性のある日本株にも、チャンスが巡ってくると考えられます。

米国株の状況を再点検

11月の米国株は値動きの激しい展開となりました。S&P500の予想PER(12ヵ月先予想利益ベース、以下同様)は、一時15倍を割り込んだ後、回復に転じたものの、再び低下して15倍近辺で低迷した状態にあります。

この予想PERは今年9月までは16倍の後半で推移していたことを考えると、相当低い水準であることは否めません。表面的には、先行きの業績不安を強く反映した結果と受け止められますが、果たして米企業の業績は、変調を来し始めていると見るべきなのでしょうか。

7~9月期決算の発表が始まる前までは、米企業の業績に対しては懐疑的な見方も少なくありませんでした。グローバルに存在する様々な不透明要因が、そろそろ米企業に悪影響を及ぼしてきても不思議ではないと考えられたためです。

しかし、実際にフタを開けてみると、決算の内容は思ったよりも悪いものではありませんでした。というよりも、むしろ1~3月期や4~6月期を上回るほど、良好な着地であったと言えるかもしれません。一部に存在した、米企業の業績悪化に対する懸念は、杞憂に終わったと見てよいでしょう。

2018年通年での増益率は、トランプ減税にも支えられ、最終的には前年比+25%程度まで高まる可能性があります。しかし、足元の業績の好調によってハードルが引き上げられた関係で、2019年増益率の市場予想は、前年比で+9%を下回っています。

減税効果が剥落するため、ある程度の増益率の低下は致し方ないことですが、高い増益率に目が慣れてしまった市場参加者には「業績モメンタムの低下」と映っている可能性も否定できません。市場の高い期待に応え、ブル相場が継続するためには、やはり「2桁(10%以上)増益の確保」が必要不可欠と言えそうです。

米企業の業績動向、カギを握るのはITセクター

2018年の業績動向で、上方修正の演出にもっとも寄与したのはIT(情報技術)セクターでした(原油価格上昇に押し上げられたエネルギーセクターを除く)。もともと同セクターの会社予想は保守的であることが多く、それが最終的なポジティブ・サプライズにつながった面があります。

一部の主力IT企業に対して業績の陰りを指摘する声もあり、2019年のITセクターの増益率予想は5%台と低くなっていますが、2018年並みの上振れ着地が実現すると、市場全体を2桁増益にまで押し上げる可能性が高くなるでしょう。

消費者向けの製品やサービスの提供に関わるITセクターのビジネスの特性上、消費者マインドが高止まりする現状は、環境としては決して悪くありません。目前に迫るホリデー商戦の好不調が1つの試金石となるのではないでしょうか。米ITセクターの成長ポテンシャルを信じる限りは、2019年の米国株に弱気になるのはまだ早いと感じています。

日本株の再浮上はいつ?

11月の日本株も米国株の上昇・下落に一喜一憂する展開で、荒い値動きが目立ちました。2018年度上期の決算は概ね良好で、主要企業(大和証券が集計対象とする200社ベース)の上期経常増益率は+17%に達しました。これは各会社側の予想を顕著に上回る結果です。それにもかかわらず、市場はこれを好感せず株価は停滞したままでです。

10月中旬まで13倍台で推移していたTOPIXの予想PERは、12倍前後まで低下し、必要以上に評価が切り下げられている印象があります。為替相場も円安気味で推移していることから、本来であれば、業績上振れ期待が高まってもおかしくない状況です。

結局のところ、世界の景気敏感株たる日本株は、中国の景気不安に端を発するグローバル景気の減速懸念や米国株安を反映し、予想PERの切り下げが起きていると解釈されます。再び予想PERが13倍乗せを遂げるためには、米中貿易問題の進展や欧州問題(英のEU離脱やイタリア財政問題)の解決など、外部環境の整備が必要と考えられます。それらの条件が年内に整うということであれば、年末に向けて一矢報いる展開も十分期待できるでしょう。

グローバルの株式市場で再度リスクオンのムードが高まる局面では、政治・経済の安定で均整のとれた日本株が相対的に優位なポジショニングを築くと考えています。

(文:大和証券 投資情報部 チーフ・グローバル・ストラテジスト 壁谷洋和)

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