わが国の2018年7~9月期決算の決算発表を受けて、2019年3月期の業績に対して不安を持つ方も増えているようです。今回は、わが国企業の業績を整理したいと考えます。


中間業績の内容は良かった?悪かった?

皆さんは、2018年7~9月の業績発表について、どのような感触をお持ちでしょうか。
余り良くなかったという印象が一般的なものではないかと考えます。

経済指標や業績発表においては、市場は予想比、上振れしたか、あるいは下振れしたかを重視することは皆さんがご承知の通りです。

ブルームバーグが纏めた2018年7~9月決算のサプライズ(驚き)のデータを見てみましょう(下図)。

まず、全体について考えます。売上については、3.5%のポジティブ(正の)・サプライズとなっています。これは、予想と比較して+ 3.5%売上げが大きかったことを示しています。
この数字からは、わが国企業の売上げは順調に推移したことが分かります。

一方で利益に注目すると、-2.8%のネガティブ(負の)・サプライズです。これは、利益については残念ながら予想に届かなかったことを示しており、株価が企業の利益の影響を強く受けると考えると、株式市場の悪材料と考えられます。

セクター別データをみた場合にお伝えしたいこととしては、一般的には、テクノロジーセクターの業績が苦戦しているような印象がありますが、このデータを見る限り、売上げ・利益ともにほぼ予想通り、あるいは若干の上振れと評価できるように思います。

通期の業績予想に変化はあるか?

それでは、7~9月期決算の発表を受けた通期の業績(2019年3月期)については、どのように考えるべきでしょうか。投資判断においては、通期の業績予想が重要であると思われます。

日本経済新聞社は、決算シーズンにおいて、主要上場企業が発表する業績の集計のデータを公表しています。2018年11月16日付けの新聞によると、2019年3月期の業績集計は、全産業合計で、売上は+3.6%の増加、経常利益は+6.2%の増益、最終損益は+1.2%の増益となっています。

これらのデータや、不透明な米中貿易・知財問題を受けて、2019年3月期は利益が(前年度比で、以下同様)減少すると予想する方が、今後増える可能性があると私は考えています。

もし、仮に減益になるのであれば、現在の割高・割安を示す予想PERがアベノミクス開始後のレンジの中で、低位にあるとしても、株式への投資は危険であるという主張が力を増すことが予想されます。

外的要因から通期業績を予想!

それでは、本当に2019年3月期は利益が減少することになるのでしょうか?ここが投資判断の大きなポイントになると思われます。

まず、利益が減少することを根拠付ける主張としては、なんといっても米中の貿易・知財問題があります。貿易・知財問題がどこまで拡大するかが分からない中、企業活動が委縮することなどから、減益となるという主張は、利益の落ち込み幅に関する具体的な数字の推測は困難ではありますが、イメージ的には受け入れやすい主張であると考えます。

ほかにも、循環論的な立場から米国の景気拡大期が過去と比較して長期に及んでいるため、直ぐに、あるいは2019年から、景気後退局面入りするという主張もあると考えます。

逆に、利益が減少しないことを根拠付ける主張としてはどのようなものがあるのでしょうか。まず、売上の伸びが3%を超える中で、利益の伸びがマイナスになることがあるのかという主張が考えられます。

たしかに、人件費などのコストが上昇している面はありますが、(かつてならいざしらず、)コーポレートガバナンスの改善が進展する現在のわが国において、利益が減少するにも関わらず、売上を伸ばすことに邁進している企業が大多数を占めるとは思われません。

また、売上が好調な中で利益が減少する要因としては、円高の進展などが考えうるのですが、足元のUSドル円相場は、113円を挟んだ安定した推移と評価できると考えます。

次に、わが国の2018年7~9月期の実質GDPが前期比年率で-1.2%となったことからもわかるとおり、7~9月期決算は、猛暑、台風、震災などの災害の影響を強く受けているという主張が考えられます。

10月の輸出金額は前月比+4.3%と増加していますし、10月の訪日外客数(推計値)は、前年同月比+1.8%の増加となり、9月の前年同月比マイナスから回復しています。

私自身は、災害の復興需要などが期待できることに加えて、為替が落ち着いて推移する中、売上が増加、利益が減少するという組み合わせは考え難いと思います。従って、市場が利益の減少まで織り込むようであれば、有効な投資機会になるのではないかと考えます。

(文:アセットマネジメントOne チーフ・グローバル・ストラテジスト 柏原延行)