制度を活用して医療費負担を減らす

――そんなに高額な治療だと、お金のない人は受けられないと思うのですが……。
自治体や病院によっては、がん治療のための融資や特定の金融機関などでお金を借りた時に、金利を自治体が負担してくれる利子補給制度などを用意している場合があります。だから、高額な治療だからと最初からあきらめないでも大丈夫。

あと、医療費は確定申告で所得控除でき、税金が安くなります。医療費が人生を左右するような事態はなるべく避けていくために、そういったお金の知識も大切です。

――そういった情報は、どうやって調べたらいいのでしょう?
医療ソーシャルワーカーという職業の方がいて、身体的・精神的なケアだけでなく、自治体の助成制度などをはじめとするお金のことについても教えてくれます。

病状や治療によっては、病気やけがによる障害のために日常生活や働くことに支障が出た場合に支給される公的年金制度・障害年金を、がんの場合ももらえる可能性があるので、そういったことを相談できるのも安心です。

各病院にいる場合が多いので、積極的に相談してみてください。

弘子さんと過ごした後悔のない5年間の秘訣


――闘病中のお金のことで、こうすればよかった、ということはありますか?
お金のことを含めて、ひろとの生活において後悔はありません。それは、きっとひろもそうでしょう。

彼女はつらいことを心の隅において、今を楽しむことができる女性だったから。

僕たちはがんを倒すのではなく、がんと共生しようとしていました。現代の医療技術では完治できないとわかっていたので、身体のなかで飼いならそうとしていたんです。そして、ひろとよく「がんはサナダ虫だと思え」と言って、笑い合っていた。

そして、病気だからと我慢せず、とにかくなんでも楽しんだ。

二人の共通の趣味だった海外旅行にも、よく行きました。体が動かなくなってから後悔しないように、ひろのことは病人扱いしなかった。その代わり、いつも楽しい時間を過ごしていました。

お金についても、生活についても、やれることはやりきった。後悔しないためには、なんでも我慢しないこと、諦めないことが大切だと思います。

だからこそ、ひろと過ごした5年間は、僕にとって人生で一番幸せな時間になったのですから。

※後半は近日公開

前田 朋己
1980年、兵庫県生まれ。兵庫県議会議員。立命館大学政策科学部卒後、大手投資ファンド勤務。その後、政治家へ転身。著書に『最後の「愛してる」 山下弘子、5年間の愛の軌跡』(幻冬舎刊)。

『最後の「愛してる」 山下弘子、5年間の愛の軌跡』前田 朋己著


「僕らには最初から、ハッピーエンドはなかった。それでも、誰よりも幸せだったんだ」――19歳でがんを患い、余命宣告を受けた山下弘子さん(享年25歳)。病に負けず、全力で“今”を生き抜く姿は日本中の人々に勇気を与えた弘子さんを、いちばん近くで見守り、支え、ともに闘ってきた夫が初めて明かす、意外な出会いから、永遠の別れのときまでを明かした5年間の記録。