2018年11月、米国で大統領選挙の2年後に実施される中間選挙が行われました。予想通り、上院は共和党、下院は民主党が過半数の議席を獲得し、来年1月から「ねじれ」議会になることが確定しました。では、今回の結果を投資家の観点からどのように受け止めれば良いのでしょうか。


「ねじれ」議会で、米国の政策は変わる?変わらない?

そもそも先進国において選挙結果が経済構造を変えるケースは少ないですが、今回も選挙結果が世界や米国の経済の強いトレンド(長期的な方向性)に大きな影響を与えることはない、と考えています。

「ねじれ」議会となった米国において、下院で多数派となった民主党は財政拡大、上院で過半数を維持した共和党は減税、といった志向が強く、この考え方の違いから当面の政策が変化する可能性は否定できません。しかし、どちらの政党の言い分も通りにくいし、結果も大きく変わらないとみています。

例えば、世界の注目を集めている通商政策(貿易摩擦)は、議会を通す必要のない大統領令で行われていますので、変わりにくいでしょう。一方、トランプ政権が主張するさらなる減税政策は、議会で通りにくくなるかもしれませんが、民主党はインフラ投資拡大に前向きなので賛成するかもしれませんし、保護主義的な政策への反発もそれほどではないと言われています。

また、国政調査権の乱発や大統領弾劾発議の乱用などで議会が混乱し、短期的に市場参加者が不安になる事態も想定されます。しかし、全体的な政策の方向性は選挙後もあまり変わらず、景気見通しを変更するまでには到らないと考えています。

米国の経済成長への影響は小さい

米国の中央銀行や議会、裁判所などの独立性が崩れない限り、「ねじれ」議会という選挙結果が、GDP(国内総生産)や企業収益に大きな影響を与えるとは想定していません。

米国経済は、2008年のリーマン・ショック以降に失われた雇用が2014年5月ごろにかけて回復し、翌2015年から明確な雇用増に転じ、2016年ごろから賃金上昇、2017年ごろからは消費や輸出の回復、といった大きなトレンドで回復してきました。

この一連の動きは、「ねじれ」議会で機動性に欠けていたオバマ前政権の時期に、企業の雇用削減→利益回復→勝ち組企業の雇用増が淡々と進んで実現してきたものであり、現在も継続されていると思います。

懸念されることといえば、先に触れた米中貿易摩擦に関わる通商政策です。そもそも、トランプ政権の目的は、相手国の不公正を是正することにより、当面の貿易赤字を削減することです。日本やドイツとの二国間交渉では、具体的な不公正が多くない(あまり行われない為替操作や一部製品への保護など)でしょう。

ただし、中国については、不十分な知財権保護や国営企業優遇、補助金供与などの不公正にかかわる構造問題があるので、本質的な解決には時間がかかると想定されます。しかし、米国が輸入品にかける関税は消費への影響を小さくしようと工夫されており、成長への影響は限定的とみています。

2020年の米大統領選までに想定しておくべきことは?

通商政策の動向が注目され続けるでしょう。トランプ政権は、今年、戦略的に関税を引き上げることから始めました。2019年は、この関税引き上げをテコに実際の交渉(ディール、取り引き)が始まり、投資家には貿易摩擦が改善したかのように見えると想定します。

この交渉は、1990年ごろに始まった日米構造協議と似た面があるのですが、中国の場合、消費財でブランド力があった日本とは異なり、自らのブランド力や価格交渉力があまり強くないため、不十分な知財権保護などの問題をすぐに解決できるとは思えません。そのため、中国が資本市場の自由化などを小出しにしたとしても、2020年の米大統領選挙を前に、トランプ政権は再び強硬姿勢をみせるのではないか、と想定しています。

このように、最大の焦点になるとみられる通商政策について、トレンドとしては中国側の解決が難しいことから横ばい、サイクル(短期的な方向性)として、2019年は穏やかになるが2020年は緊張が高まる、と想定しています。

(文:日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 神山直樹  写真:ロイター/アフロ)