はじめに

JR渋谷駅の新南口から、歩いて1分。立ち並ぶビルの1階部分に、真新しいアパレルショップがありました。店内に入ってみると、複数のセットアップやバッグ、オシャレな文房具などがディスプレーされています。

しかし、それら以上に目を引いたのが、店内にいくつも置かれた、白いコンテナ。店員がこのコンテナを開いて、検討客に説明している様子もうかがえます。

実はここ、アパレル大手のワールドが12月7日に開業した新業態の店舗なのです。いったい、どんな特徴を備えているのか。そして、この店舗を核に、ワールドはどんな戦略を描いているのか、深掘りしてみます。


オフィスのカジュアル化に対応

店舗オープンと同日にワールドがスタートさせた新事業「UNBUILT TAKEO KIKUCHI(アンビルト タケオキクチ)」。その立ち上げにあたって、同社が着目したのは「働き方の多様化」でした。

働き方改革やオフィスのカジュアル化などに伴って、メンズのビジネスウェアの世界では既製スーツの売り上げが低下。これに代わる収益源として、オーダースーツ事業に参入するアパレルメーカーが後を絶ちません。

アンビルトでも、働き方やスタイルに合った選び方を重要視しています。しかし、同業他社の多くがオーダースーツを軸に事業を展開するのに対し、アンビルトではあえて「セットアップ」を前面に打ち出すことを決めました。IT系のベンチャーなどを中心に、シャツやネクタイの着用を前提としないカジュアルなコーディネートが増えているためです。

客はスマートフォンやタブレット端末などでアンビルトのサイトを開き、モデルが着ている24のコーディネートから気になったものを選び、ウェブ上でカスタマイズが可能。初回に店舗で採寸しておけば、2回目以降はウェブで注文を完結することができます。

最短10日で宅配、価格は4万円弱から

商品は、注文してから最短だと10日で宅配可能。価格は3万9,000円から7万9,000円。ワールドの上山健二社長は「パーソナライズされたセットアップを、既製スーツと同程度の値段で利用していただける。さまざまなロスの削減を商品価値に置き換えて提供します。高品質・探偵供給で他社を上回ります」と、自信を見せます。

上山社長の言う「ロス」の1つが「企画ロス」。アンビルトでは客のニーズに合わせて商品がカスタマイズできるので、売れない商品を開発してしまうというロスが発生しません。もう1つが「在庫ロス」。在庫を保管・運搬するための費用や、売れなかった場合の処分コストも不要というわけです。2回目以降は来店不要なので、店舗スタッフを過剰に抱える懸念もありません。


既存事業との違いについて説明する上山社長

縫製を担当するのは、タケオキクチのメイン工場である、センチュリーテクノコアの弘前工場。タケオキクチがこれまでに構築してきたサプライチェーンを活用し、機能性の高い素材や動きやすい仕様などを用意。デザインについては極力シンプルにし、過度に装飾的なものは外して、縫製技術が前面に出る作りにしたといいます。

ターゲットは、10~70代の幅広い年代の男性。なおかつ、既存ブランドだと洋服が好きな人を中心に据えてブランディングしていましたが、アンビルトでは「ビジネスシーンをよりシンプルにしたい、時間・空間・コストが合理的であることに価値を見いだすユーザー」(尾関修司・「アンビルト タケオキクチ」屋号長)にフォーカスしたそうです。

白いコンテナが販売のキーツール

1号店となる渋谷店のコンセプトは、ウェブでの検索・編集結果をいかに垣根なく実空間と連動させるか。店員に頼らず客がほとんど自分でコーディネートする「半セルフ」から、来店時から注文まで店員が立ち会う「フルアテンド」まで、来店客のニーズに合わせた多様な接客を展開する方針です。

そのための仕掛けが、冒頭で触れた白いコンテナ「アンビルトコンテナ」です。この中には、シーズンごとにウェブ上で公開している24のコーディネートが収められています。ウェブで見て気になったコーディネートと同じ番号のクローゼットを開けると、実際の商品を確認できます。


スマートフォンでコンテナのQRコードを読み取る尾関屋号長

コンテナに貼ってあるQRコードをスマホなどで読み取れば、ウェブ上の商品ページが表示されます。この機能を活用すれば、店舗で商品が決めきれなかった時も、自宅で注文ができるわけです。

もちろん、アンビルトではセットアップ以外に、単品のパンツやジャケットも用意。シャツは8,000~1万5,000円でオーダー可能です。オーダー利用客には、シーズンオフに特別価格で商品を預かるサービスを展開。場面に合ったネクタイが選べるレンタルサービスも、来年の春夏シーズンにスタートする予定です。

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