はじめに
「人類の進歩と調和」をテーマに掲げ、1970年に開催された大阪万博。それから55年ぶりに、再び大阪で万博が開催されることになりました。
実は、私は幼少期から大阪・千里で育ち、現在も千里に住んでいます。地元で開催された1970年の万博には、たぶん20回以上は会場に行ったと思います。太陽の塔を見ながら大きくなった人間なので、再び大阪で万博が開催されるのは、とてもうれしい喜びですし、何とか2025年までは元気で頑張ろうと気を引き締めています。
おそらく私と似たような気持ちで喜んでいる関西人はかなり多いはず。日本の高度成長期を象徴的なイベントとして東京五輪に続いて行われたのが1970年の大阪万博ですが、2025年の万博は当時とは開催の意義や背景がまったく異なるので、当時と同じような盛り上がりや経済効果を期待するのは無理があるでしょう。
しかしながら、政治、金融・経済、産業など幅広い分野で東京への一極集中が進みつつある中、関西復権のきっかけとしても大いに期待されるイベントになりそうです。そうなると、地元・大阪に所縁のある企業の中にも、株価上昇が期待できる有望銘柄が出てくるかもしれません。
経済波及効果は約2兆円
2025年の大阪万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げ、5月3日から11月3日まで185日間で開催される予定です。誘致委員会によると、想定来場者数は約2,800万人、経済波及効果は約2兆円と試算されています。
賑わいを見せた1970年の大阪万博
経済効果についてはいくつかの試算があるのですが、2024年に大阪府・市が開業を計画している、カジノを含む統合型リゾート(IR)が計画通りに実現すれば、IRと万博との相乗効果で、経済波及効果は2027年までで6兆円を超えるとの試算もあります。
このかなりの部分が関西圏に及ぶことになる見込みです。関西圏の経済規模が約84兆円であることを考えると、インパクトは大きいといえるでしょう。
「負の遺産」が「夢の島」へ
万博の会場となるのは「夢洲(ゆめしま)」という大阪湾の人工島。総面積は390ヘクタール(東京ドーム約83個分)で、現在はそのほとんどが空き地となっていて、維持費は大阪市民・府民の負担となっています。
バブル期に「テクノポート大阪計画」として、夢洲・舞洲(まいしま)・咲洲(さきしま)の3地区が埋め立てられたのですが、バブル崩壊で新都心の計画は頓挫。夢洲は2008年夏季五輪の選手村の候補地となりましたが、誘致に失敗しました。
この「負の遺産」が万博、さらにはIRによって、まさに「夢の島」へと変貌しそうです。大阪ベイエリアは、関西の新たな観光スポットに育つ可能性が大きく膨らんできました。
どんな銘柄に恩恵が及びそうか
国際的なビッグイベントによって新しい街が誕生し、大きなお金が動き、多くの人が動くわけですから、そこには大きなビジネスチャンスが浮上してきます。株式市場においては、万博でメリットを受けそうな関西圏の企業に対する関心が高まることになりそうです。
まずは、建設予定地の近くで夢洲に土地を保有している、山九(証券コード:9065)、上組(9364)、ヨコレイ(2874) が注目されます。
商業施設やホテルなども含めて、鉄道会社のビジネスチャンスは広がりそうです。夢洲から1回の乗り換えで京都へアクセスできるように延伸を計画している京阪ホールディングス(9045)、関西国際空港からのアクセスで利用される南海電鉄(9044) と JR西日本(9021)、関西圏への訪問客が増えることで近鉄ホールディングス(9041) や 阪急阪神ホールディングス(9042) にも恩恵は及びそうです。
関西発祥で1970年万博でも実績が豊富な 大林組(1802) や 奥村組(1833) など、ゼネコンにも活躍の場が広がるでしょう。数え上げればキリがなさそうなのですが、実際に万博が開催されるのは2025年ですから、それまでには思いがけない関連銘柄の浮上が十分に考えられます。
私たち、関西に拠点を置くアナリストにとっては、有望企業の発掘に向けて関西企業の調査が忙しくなりそうですが、やりがいと責任も重くなるでしょう。まだ先は長いので、投資家の皆さんには万博開催で注目されそうな関西企業をじっくりと仕込んでいってほしいと思います。
今回は一般的な万博関連株をご紹介しましたが、次の機会には現地発ならではの、ユニークな関連情報や銘柄をお伝えできるよう、情報の収集や分析に励みたいと思っています。