はじめに

2018年の株価を振り返ると、年明けは上昇して始まったものの、その後は警戒感から下落する局面も多く、上昇が長続きせずに一進一退の1年となりました。

企業業績も引き続き増益基調で最高益をマークする企業も多いのに、これまで好調だった米IT企業や中国の半導体業界などに減速傾向が出て、関連銘柄が売られる局面も増えました。

実際の株価推移はどうだったのか、業種別指数の動きから、2018年の傾向を振り返りたいと思います。


業績・個別要因だけでは説明しにくい

12月19日終値時点での業種別株価指数の年初来騰落率ランキングを見てみましょう(下図)。上位は電力・ガスを筆頭に医薬品、小売、運輸・物流、不動産の順になっており、下位は鉄鋼・非鉄をボトムに、機械、銀行、建設・資材、エネルギー資源です。

これを各業種の当期利益合計の増益率と比較します。この図表では大きな変化を見るために、前年同期比2ケタ増加と同マイナスのみ記載しました。横ばいもしくは1ケタ増は無印です。

実績と会社予想がどちらも2ケタ増益の商社・卸売と電機・精密はランキングの中ほどにあり、評価はあまり高くないようです。実績や予想値を株価が織り込むタイミングに違いがあるとしても、増益率と2018年騰落率ランクの相関性は高くないようにもみえます。

もちろん、業種によっては利益以外にも影響を与えた要素があるでしょう。例えば自動車や鉄鋼など米国の関税対象となった業種では、期待値が低下して利益水準と関係なく下落した可能性がありますし、市場金利が下がれば銀行や保険などは下落しやすいと思います。為替や原油価格など、業種ごとに影響を受けやすい市場価格やトピックもあるでしょう。

「2017年の逆」の説明力の高さ

次に2017年と2018年の指数騰落率を比較したものを見てみましょう(下図)。点の集まりは直線には並んでいなくて、相関係数はそう高くはないかもしれませんが、全体的に右下方向に向かっています。これは2017年の上昇率が高かった業種は2018年の下落率が大きく、2017年の上昇率が低かった業種は2018年の下落率が小さい傾向にあることを示しています。

このことは、実は「逆張り」が有効だった可能性を示唆しているように見えます。ちなみに2017年は日経平均が19.1%上昇し、ほとんどの業種が上昇しましたが、東証REIT指数は10.8%の下落でした。ところが2018年は、日経平均の7.8%下落に対して、同指数は8.1%の上昇です。「日経平均vs REIT指数」でも「逆張り」が効いているようです。

上がりにくい2019年の株価

12月19日の日経平均終値は20,987.92円と、3月以来の安値圏で推移しています。12月の株価下落の背景は、米長期金利の3%割れをキッカケに米国経済の減速懸念が拡がり、市場心理が悪化したことが最大の要因でしょう。

米大統領選(2016年11月)以降、これまでの株価上昇は、国内企業業績の増益基調に加え、世界経済の安定成長が基礎要件でした。そのけん引役となる米国と中国の経済動向に対し、市場が減速サインを感じ始めています。

2019年は、米国経済が昨年の減税効果が一巡して減速リスクが高まるほか、米中通商摩擦の両国経済へのマイナス影響も気になります。加えて米FRBの利上げ終了が意識されれば、米長期金利も低下しやすくなりますし、日米金利差が縮まれば、為替にも円高圧力がかかりやすくなります。

世界中の複数の地政学リスクも、解決の糸口は見えていません。中国が大規模財政出動するなど、現時点では想定外の材料が出てくるまでは、株価上昇に向かう可能性はまだ低いと思われます。

業種ごとにみても、輸出産業は米中経済の減速懸念と資材価格上昇、国内産業は人手不足やコスト上昇があり、五輪関連やインバウンド関連も含めて2017年までのような好調業種は見つかりません。2019年に向けた前向きなテーマもしばらくは出てこない気がします。

しかし逆張りはありかも

しかし、2018年のように2019年も「上がったら売る」「下がったら買う」という「逆張り」が有効なのであれば、個別銘柄や業種ごとの業績の変化がなくても、一定の投資効果を上げられる可能性があることになります。

つまり、2018年の株価が不振だった業種から銘柄を選ぶのです。その業種の中から好きな銘柄を選んでもよいですし、「自動車ならトヨタ」というようにその業種の代表的な銘柄を選ぶのもありです(海外投資家は代表的銘柄を選ぶ傾向にあります)。

そして、業種別ETFや同投信を活用するのも一案です。ETFや投信なら銘柄を選ぶ手間が省けますし、少額から運用組み合わせを選べます。その際、1つ選ぶよりも複数選ぶ方が安定度が高まります。

株価上昇が期待できない局面でも有効な投資手法の1つにロングショート戦略があります。割安な銘柄を買い(ロング)、割高な銘柄を信用取引等で売り建てる(ショート)手法で、ヘッジファンドの代表的な運用手法です。ペアトレードと言って、同一業種の中で割安株・割高株をペアにすることも多く活用されています。

先ほど2019年は株価が上がりにくいと書きました。その前提で行くと、その中でも上がりそうな複数の業種・銘柄をロング候補とし、ショート側は日経平均とするのも一案です。

例えば、増益が続いているのに2018年の株価が不振だったハイテク業種を「逆張り」でロングとし、ショート側は日経225先物を売り建てるか、インバース型ETFを買うのです。業種別ランキングは結構参考になる指標です。皆さんもいろいろ考えてみましょう。

注)インバース型ETFは、日経平均やTOPIXなどの指数と逆の動きをするように設定されたETF。例えば日経平均が上がると、日経平均インバースETFの価格は下がり、日経平均が下がるときは、日経平均インバースETFの価格は上昇する。

<文:ストラテジスト 田村晋一>

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