今年の株式市場は、年初には昨年末からの波乱が見えたものの、足元では米国で金融政策について柔軟な姿勢が示され、中国政府が景気下支えの姿勢を繰り返したことなどから、反発しています。

今回は、今年ここまでの動きから、年内の投資戦略をどう組み立てれば良いのかをお伝えします。


“減速”と“後退”を混同するなかれ

今年1月、IMF(国際通貨基金)は世界経済見通しを発表し、世界の経済成長率が2018年の3.7%から3.5%に低下すると予測しました。ここで混同して欲しくないのは、この見通しが示すのは“後退”を意味するマイナス成長ではなく、“減速”でもプラス成長である、ということです。

自動車の走行でいえば、スピードを50km/hから40km/hに“減速”しただけで、前に進まずバック(後退)しているわけではない、ということです。もしバックしてしまったら大変なことで、景気でいえば継続的なマイナス成長となり、かなり重大な変化ということになります。あくまでも経済はプラス成長であることに変わりないのです。

次に物価上昇の勢いについてですが、米国を中心に限定的とみています。米国を例に挙げると、中央銀行は雇用とインフレの両方をにらみながら金融政策を行うことから、現時点で物価上昇の勢いが弱ければ、利上げをしてまで景気を冷やすことはないでしょう。

また、雇用増で平均時給伸び率が3%台に達していますが、そろそろ天井感が出ているように思えます。そのようにみれば、今年の利上げは0~2回、長期金利は3%程度が上限になるとみて良いと思います。

今年の投資戦略は、このような想定で考えていきます。

株価の回復はいつ頃になる?

次に、昨年9月末以降、なぜ世界的に株式市場が下落したのかを整理しておきましょう。大きくは3つの要因と考えられます。

(1)米国の平均時給の伸び率が3%台に定着し、政策金利・長期金利の高止まりで株式が売られ債券が買われやすかったこと
これは、一度は起こる現象で、何度も起こるとは想定していません。3%台であった米長期金利は2018年12月から2%台が続き、株式を売って債券を買う動きがなおも続くとは考えづらいです。

(2)米国を代表するIT関連銘柄のバリュエーション(投資尺度)の高止まりに対し、主要国で(1)の株式売りに乗じた社会的責任(情報漏洩防止等)コストを織り込んだバリュエーション調整が始まったこと
IT関連銘柄の環境は、以前ほどの成長を見込むことが適切ではないともいえますが、収益環境そのものは経済成長率の減速に影響するとしても、総じて長期低迷に陥るとはみていません。今後、バリュエーション調整は落ち着くとみています。

(3)一部の年限でイールドカーブ(利回り格差)が逆転したことで、景気後退の懸念が強まったこと
現在、景気後退の予兆はそれほど見当たらないため、(1)と(2)が落ち着けば、景気後退の懸念は和らぐとみています。これから企業収益やGDP成長率などが発表されるにつれて、市場は景気後退リスクを織り込み過ぎであったことに気づき、株式などに資金がシフトされる、と予想しています。

現時点でIT関連銘柄のバリュエーション調整はすでに終了し、株式から債券への資金シフトは一巡したと考えていますが、景気後退リスクの払拭はこれからだと思います。

消費税増税への懸念から出遅れ気味の日本株を例にあげると、昨年の日経平均株価は、IT関連銘柄の株価が青天井と見られていた頃に2万4,000円程度、年間の平均的水準は2万2,000円程度でした。

したがって、2万2,000円程度までの回復は「景気後退リスクがなくなる」(例えば4~5月の企業の決算発表以降)ことで起こり得るでしょう。その後、年末にかけて緩やかな回復が続くとみています。

年前半はリバーサル、後半は新興国市場に期待

以上を踏まえて考えると、今年前半はこれまでの売られ過ぎからの回復狙い(リバーサル戦略)、その後は成長機会を享受する投資戦略が良いと思います。

日経平均株価で昨年の高値(月末ベース)であった2万4,120円(9月末)を基準に、今年1月末までの主要株価指数や通貨のリターンをみてみましょう(下図)。

売られすぎの市場は、まず日本株、次に中国(上海)株、そして欧州株や通貨も相対的に出遅れています。一方、新興国の株式や通貨は、ちょうど経済政策の効果が現れて回復基調にあります。

2019年前半は、下落率が大きい市場ほど売られすぎの修正(リバーサル)が起こりやすくなり、後半は、すでに売られすぎの修正が先行している新興国が、先進国よりも高い成長率を享受できる市場として注目されると期待して、投資戦略を組み立てることが良いと思います。

<文:チーフ・ストラテジスト 神山直樹 写真:ロイター/アフロ>