はじめに

連載『お金の育て方』では資産運用を始める際に心がけるべきことや、株式投資と投資信託の基礎について書いてきました。これまでの6つの記事を読んで、なんとなく資産運用について重要となるポイントは理解できてきましたでしょうか。

そろそろ自分でも始められそうだと思っていただけたなら大変うれしいのですが、いざ始めようとすると新たに気になってくることもありますよね。

自分が持っている資産(貯金)のうち、どれぐらいの割合を投資にまわせばよいかもその一つです。そして、投資にまわす資産のうち、どの金融資産をどれぐらいの割合で購入するか。今回はそこについて書いていきます。


日本人の資産状況を知る

日本人はお金の話はしたがらないので、他の人がどれぐらい持っていて、どのように運用しているのか、あまり知りませんよね。まずは日本人の資産状況についてデータを見てみましょう。

総務省統計局が発表した『家計調査』によれば、平成28年における⼆⼈以上の世帯の貯蓄現在⾼は平均では1,820万円となっています。ただし、世帯を⾦額の低い世帯から⾼い世帯へと順に並べたときに,中央に当たる世帯の貯蓄現在⾼は1,064万円と平均を⼤きく下回っています。

ここで少し統計学の話をします。なぜ平均が1,820万円なのに、中央値の1,064万円も提示したのでしょうか。容易に想像できるかもしれませんが、貯蓄が少ない世帯は非常に多く、貯蓄が多くなるにつれて、世帯数は少なくなっていきます。そのような場合では、富裕層の貯蓄額が全体の平均を押し上げてしまうため、中央値の方が実感に近づいていきます。つまり、二人以上の世帯であれば、統計上はだいたい1,000万円ぐらいの貯蓄であることがわかります。

この統計では貯蓄といっても貯金だけではなく保険や株式も含まれていますが、内訳を見てみましょう。貯蓄の内訳の平均値をみると、39.9%を定期性預貯金、22.6%を通貨性預貯金が占めています。言葉が難しいですが、要は定期預金と普通預金が資産の62.5%を占めていることがわかります。日本人が貯蓄好きというのはこのデータからも明らかです。

そして、生命保険などの保険類が20.8%、株式など有価証券が14.6%、そして社内預金などの金融機関外に預けた資産が2.1%となっています。つまり、この平均値だけでいえば、日本人は資産の内の15%程度を資産運用にまわしていることになりますね。

フローとストックの概念を理解する

資産運用をする上では、フローとストックの概念を理解した方がよいでしょう。前述した貯蓄はストックにあたります。会社勤めをしている人やアルバイトをしている人は貯蓄以外にも給与という形で毎月新たにお金を手に入れることができます。これがフローです。

資産運用を考える時、ストックの内の何割、フローの内の何割を運用にまわすか、2つのケースを考えなくてはいけません。

ストックについてはデータを基に、平均で15%程度を資産運用にまわしていることがわかりました。ここではもう少しフローについて書いてみます。

たとえば毎月収入が手取り30万円として、家賃や光熱費など、毎月かかる固定費を差し引いて15万円が残り、そこから食費や交際費(飲み会代など)を引き、5万円残るとしましょう。不測の事態に備えて3万円は現金で持っておくとすると、2万円が毎月資産運用にまわせる金額になります。この毎月の2万円がフローになります。

この例でいうと、平均値に基づいて貯金の内の15%を資産運用にまわし、かつ毎月2万円を新たに運用する投資行動になります。

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