はじめに

最小の労力で「アウトプット」を最大化する方法

「そうはいっても、アウトプットのしかたがわからない」という人も多いでしょう。インプットした情報をアウトプットするためには、まず頭の中を整理する必要があります。

頭の中を整理する方法は、何より「自分の言葉に直すこと」です。そのための具体的な方法を2つ紹介します。

1. 人に話す

出口氏は、おもしろいことがあったら、近くの人を捕まえて、しゃべるのが一番だと勧めます。たとえば、本や映画など、部屋で「ひとりで読んだり観たりしたもの」は後で思い出そうとしても忘れてしまっていることが多いのではないでしょうか。

しかし、友だちと感想を述べ合ったものは、しばらくたってもはっきりと覚えています。感動の直後に自分の思いや感情を言語化したことで、思考が整理されて知識が定着するからです。

ある大手総合商社のトップは、知りたいことがあると、専門家を探してすぐに会いに行くそうです。そして、会社に戻ると秘書を捕まえて、聞いてきた内容をひと通りしゃべり続けるといいます。

何かを知りたいと思ったら一番詳しい人にすぐに話を聞きに行く。そして、インプットしたら周囲に喋って頭の中を整理する。これこそ、生産性を高めるための最高の勉強方法だといえます。

2. 文章に書いて人に見せる

人に話すことで考えは整理されますが、もう1つの方法として「文章に書いて人に見せる」という方法もあります。

ツイッター、ブログ、フェイスブックといった「人が読む」ことを前提としたものに書くことでも自分の頭が整理されます。会社で提出する報告書と同じように「読んだ人にわかってもらおう」という意識が働くからです。

出口氏自身、書くことで自分の頭の中が整理され、仕事の質が高まることを実感していたため、管理者になってからは、部下に「書く機会」を強制的に与えることを心がけていたそうです。

具体的には、生命保険業界の学術論文誌の事務局に頼んで得た掲載枠(年6回)を、部下に割り振り、論文を書かせていました。アウトプットのための強制的な仕組みでしたが、読者は同業者ですから、いい加減な内容でお茶を濁すわけにはいきません。

締め切りのあるまとまった量の課題に対し、ある程度の質のアウトプットを続けると、人の実力は格段に上がるのです。さらに原稿が学術論文誌に載ったり賞を取ったりすることで、部下は、大きな自信を身につけたといいます。

インプットした情報を自分の言葉で置き換えるようにすることで、思考の軸ができるようになりアウトプットにつなげやすくなるのです。


インプット後のアウトプットの回数を高めることで、少しずつ自らで考え、行動につなげる習慣が身についていきます。本書にはさらに一歩踏み込んだ「考える力が育つ『情報収集』の技術」「上司にインパクトを与える、スピード仕事術」など、出口流・知的生産性を高めるための方法が多く紹介されています。

一生懸命頑張っているのに、なぜかうまくいかない。時間ばかりが過ぎて、仕事が終わらない……。『知的生産術』は、働くすべての人に、自分の頭で考えて仕事を効率化し成果を出す方法を提案している1冊です。

知的生産術 出口治明 著


アウトプットの質が重視される現代に必要な働き方とは? 還暦でライフネット生命を創業し、現在はスーパーグローバル大学、立命館アジア太平洋大学(APU)の学長を務める出口治明氏が語る、速く賢くアイデアと成果を出す方法。働くすべての人、必読の1冊!

(この記事は日本実業出版社からの転載です)

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