3月8日に発表された米2月雇用統計は、非農業部門就業者数(以下、NFP)が予想中心値前月比+18万人に対し同+2万人と、極めて弱い内容となりました。

市場には2019年の見通しについてネガティブな予想が広まっていますが、筆者はここが押し目買いのチャンスと考えています。それはなぜなのか、理由をご説明しましょう。


米2月非農業部門就業者数(NFP)が弱い理由

米2月雇用統計発表前、筆者は「2月NFPは前月比+10万~15万人で、1月分(同+30万4千人)は同+20万~25万人に下方修正される」と予想していました。このように弱めの予想をしていたのは、前月も触れた北極極渦(ほっきょくきょくうず、Polar Vortex)の影響と、米失業保険継続受給者数が増加していたからです。

前回記事「早くも春の兆し?相場見通しが改善すると考えられる理由」で筆者は、「このような大寒波が襲来すると、指標が大きくぶれる傾向があります。今回の場合、雇用統計調査週以降にPolar Vortexが襲来したことで、3月に発表される2月分の修正値では、NFPは下方修正され、平均時給上昇率は上方修正される可能性があります」と述べました。

しかし、大寒波襲来が1月30日~2月1日だったことで、筆者が予想していた1月分の下方修正5万~10万人分は、2月分に計上された可能性が高いと解釈しています。

図1

天候要因(Polar Vortex)による一時的な悪影響は、暖かくなれば反動増になると予想されます。したがって、今回の米雇用統計を受けたネガティブ論による市場の近視眼的な反応は、ドル円の押し目買いのチャンスを作ってくれたととらえるべきでしょう。

米平均時給は予想よりも強い内容

一方、米2月平均時給上昇率は、予想前月比+0.3%、前年比+3.3%に対し、前月比+0.4%、前年比+3.4%となりました。大寒波は、非農業部門就業者数を減少させる要因となったのとは対照的に、平均時給を押し上げる要因になったと考えられます。

大寒波によって、パートタイマーやアルバイトのような低所得者層の就業を困難にさせ、日払い賃金分が減少。米国の全雇用者の時給における月給制や年俸制の比率を上げることになり、その結果、平均時給が強めに出る傾向があるためです。

図2

弱い2月非農業部門就業者数を受けて、ドル円は111円台前半から110円台後半まで下落し、米金利は低下、米株式先物は下落しました。しかし、平均時給が予想より強かったことで米金利はすぐに底打ちして上昇。ドル円も突っ込み売りが厳しくなり、111円台を回復しました。

中国の経済指標は底打ち間近

昨年から何度も触れていますが、筆者は米中貿易戦争が最終的に回避され、トランプ関税は縮小もしくは撤廃されるとみています。なぜなら、今の状況(あるいは昨年の米中間選挙の結果)のまま推移すれば、2020年米大統領選で、トランプ大統領は敗北する可能性が高いからです。

トランプ関税が縮小・撤廃されれば、中国の製造業にとってはプラスの効果がありますが、各種報道でも見られるように、中国自体も景気重視型の経済政策を次々に発表しています。それらの効果によって、3~4月分の中国指標は上昇し始めるのではないかと予想しています。

図3

トランプ関税の拡大と中国経済の更なる悪化を前提としたネガティブな2019年見通しは、トランプ関税の撤廃と中国経済指標の底打ちで、一転して「上方修正」を余儀なくされる可能性があります。こうしたネガティブな近視眼的コメント逆手にとって、押し目買いのチャンスととらえるべきではないでしょうか。

最後に、米キャタピラーからの心強いコメントを載せておきます。

図4

<文:チーフ為替ストラテジスト 今泉光雄 写真:ロイター/アフロ>