あと2週間ほどすると、12月期決算の上場会社の定時株主総会ラッシュを迎えます。

上場会社は決算書を監査法人にチェックしてもらう義務を負っています。どの監査法人に監査を依頼するかの決定プロセスは会社によって異なり、会社が候補を決めて総会に諮る場合と、会社自体に決定権があって総会では報告するだけで良い場合があります。

しかし、いずれにしても総会マターです。このため、監査法人の交代は、定時総会開催月の前々月の下旬から当月上旬くらいまでに公表されるのが一般的です。

今年も12月期決算企業の監査法人交代の発表が1月下旬から始まっていますが、今年は例年とは少々趣きが異なっています。交代を知らせる各社のリリースに、これまでにはなかったほどしっかりと交代理由が書き込まれているのです。

逆に言えば、これまではなぜ監査法人が交代するのか、その理由がちゃんと書かれてきませんでした。なぜ今年になって、こうした変化が生じているのでしょうか。


監査法人変更はどんなケースがある?

上場会社が監査法人を変える理由はいくつかあります。

1つは、会計処理の方針で会社側と監査法人の意見が対立したり、その会社の事業特性や業界慣習に対する理解をしてもらえない場合。2つ目が、監査法人の担当者が重大なミスを犯したり、何らかの粗相があって会社側を怒らせた場合。3つ目が、監査報酬で折り合えなかった場合です。

このほかに、海外子会社が増えて海外の会計事務所とのネットワークがある監査法人に乗り換える場合などがあります。

かつて監査法人の変更は、上場会社にとって非常に重大なことでした。会社が何か重大なリスクを抱えていて、監査法人に逃げられてしまったのではないか、と市場から疑いの目で見られる可能性があったからです。

売り手市場化で監査報酬は上昇傾向

しかし平成不況が長引く中で、新規に上場する会社の数が激減。監査法人間でクライアントの奪い合いが発生しました。

これによって、少しでも監査報酬を安くしたい会社側の思惑と合致。4大監査法人(EY新日本、あずさ、トーマツ、PwCあらた)間での変更や、4大監査法人から準大手への変更であれば、投資家も色眼鏡で見ることがなくなったため、監査法人変更のハードルがぐっと下がったのです。

そして景気が回復すると、今度は監査法人の人手不足が深刻化。それまで買いたたかれる一方だった監査法人も、会社に対して原価に見合う報酬を要求するようになり、一転して売り手市場になったのです。

東芝問題をはじめ、次々と不正会計が発覚したため、より厳格な監査手続が求められるようになったことも、監査法人の人手不足の原因になっています。

このため、かつては監査先数と売上高で競い合っていた監査法人も、ちゃんと採算が合うだけの報酬を払ってくれて、なおかつ粉飾発覚リスクも低い監査先しか監査を引き受けないという方針に転換。近年では監査報酬で折り合わなかったために、監査法人が代わるケースが激増しているらしいということは、噂レベルでは出ていたのです。