はじめに

2015年の発売以来、植物由来成分や天然の保湿成分を配合したことが話題となり、累計出荷本数が5,000万本を突破した「ボタニスト」。企画販売しているI-ne(アイエヌイー)によると、大手メーカーの競合商品がひしめく国内ヘアケア市場でシェア3位に位置しているといいます。

そんなボタニストが今春、新たな展開に乗り出します。そのキーワードが「パーソナライズ」。しかも、1本4,980円(税別、以下同)という、かなり強気な価格設定です。

いったい、どんな特徴を持つ商品なのでしょうか。そして、アイエヌイーはどこに勝算を見いだしているのでしょうか。3月13日に開かれた事業戦略発表会の内容から考察してみます。


9つの質問に答えれば最適解を提案

4月22日に発売される「My BOTANIST(マイボタニスト)」の最大の特徴は、アイエヌイーが独自に開発した「My BOTANIST 診断システム」です。所用時間は約2分。9つの質問に答えれば、自分の髪質に合ったシャンプーとトリートメントの組み合わせを提案してくれます。

 My BOTANIST 診断システム
9つの質問に答えると最適な商品を提案してくれる

診断システムのポイントは“髪に関する悩み”と“なりたい姿”とのギャップを埋めること。マイボタニストのために開発した基本成分に、悩みに応じた成分を加えることで、自分だけの配合を可能にしています。

その組み合わせ数は約2,000通り。香りも選択することができ、シャンプーとトリートメントで香りを変えることも可能です。

価格は前述のように、シャンプー、トリートメントとも1本4,980円。ですが、初回の注文でシャンプーとトリートメントを同時に購入すると40%オフ、2回目以降も20%オフになります。

また、自分の髪質に合っていないと思えば、初回のみ処方の変更が可能です。定期便を依頼することもでき、毛量や使用頻度に応じて30日、45日、60日から選択することができます。

診断士の知見にAIと顧客データを融合

マイボタニストの開発が始まったのは、今から3年前。きっかけは、毎月2,000人以上のEC会員が、本来はボリュームアップとボリュームダウンという目的の異なるシャンプーとトリートメントの組み合わせで購入しているのに気づいたことでした。

その理由を調査してみると、顧客は悩みの“原因”ではなく“症状”によって商品を選んでいるから、ということが判明。原因をしっかり究明し、適切な商品を提案すれば、顧客も迷わないはず。すべてのニーズに応えられるプロダクトと、最適提案ができるシステムを作ろう――。そんな発想から、毛髪診断士の協力を得て、診断システムの開発に着手しました。


“症状”ではなく“原因”別に提案してくれるのがポイント

アイエヌイーの強みの1つが、世界中の2,000万以上のニュースサイトやSNSから、どのエリアの人が何に興味を持ち、どのトレンドフェーズにあるのか、リアルタイムに把握できるAI(人工知能)システム。さらに、ECやSNSのウェブ会員数は約3,100万人に上ります。

毛髪診断士の知見に、AIのスキルと顧客データを掛け合わせることで、9つの質問だけで髪質を分析することが可能になり、マイボタニストの商品化に至りました。

「目指すは国内シェア1位」

ボタニストが牽引役となり、アイエヌイーの2017年の売上高は200億円を突破。さらなる成長に向けて複数の戦略を進めていますが、その中の1つがパーソナライズです。

同社の大西洋平代表は「現代は無数のブランド、価値観、情報が混在するようになり、1人1人に合ったパーソナライズが求められる時代になりました」と分析します。マイボタニストの発売によって、顧客のニーズはさらに増えてくると考えられるので、来年中には組み合わせ数を3万に増やしたい考えです。

「通常のボタニスト(1本1,400円)に比べると価格は高いですが、1回使っていただけると、その魅力にハマります。じっくりと着実に、通常商品と合わせて、国内のヘアケア市場で1位を目指したい」(BOTANISTブランドマネージャーの石津大介氏)

アイエヌイーは、ボタニストのカテゴリー拡大も進めており、今年中にスキンケア市場にも参戦する計画。また、現在アジアを中心に12ヵ国で展開している海外事業にもドライブをかけていく予定です。

しかし、足元がぐらついてしまっては、拡大戦略の先行きも不透明になりかねません。パーソナライズによってブランド価値を高め、地盤のヘアケア分野で確固たる地位を築くことができるか。マイボタニストが背負っているものは、単なる新商品以上のインパクトになりそうです。

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