はじめに
連載『お金の育て方』を読んでいる方は、これから資産運用をはじめてみようという人も多いかと思います。
過去の記事でも述べてきましたが、資産運用をするのであれば長期投資が基本と考えています。当然、短期間で大金を稼げた方がいいわけですが、そんなおいしい話は世の中にはなかなかありませんし、あったとしても同時に高いリスクを背負うことになるかと思います。
資産運用の目的は人によってさまざまですが、大事なお金を扱うので、過度にリスクを取るのは得策ではありません。今回はなぜ「長期」にこだわるのかを解説していきたいと思います。
金利を実感しにくい日本経済
ご存知の通り、日本は超低金利時代に突入しており、銀行に預けていてもほとんど利子はつきません。低金利の状態が長い間ずっと続いているので、最近の若い人たちは銀行に預けておくと利子がつくことすら知らないかもしれませんね。
下図は普通預金と定期預金の金利の推移を示したグラフです。普通預金に比べて、定期預金は一定期間は引き出せないという制約がつく代わりに、普通預金よりは高目の金利が設定されます。しかし、下図を見れば、普通預金の金利はほとんどゼロであり、定期預金ですら直近は0.1%もないことがわかります。
(出所)日本銀行のデータを基に株式会社マネネ作成。青が定期預金、オレンジが普通預金
金利が0.1%としても、1,000万円を預けて、1年間で1万円しか利子がもらえません。とはいえ、1,000万円を一定期間引き出さないで預けておける人はそれほど多くないでしょう。実際は50万円ぐらいとすると、もはや利子は1年間で500円にしかなりません。
なので、現在は銀行に預けるということが資産運用の1つの選択肢にはならず、あくまで安全に現金を保管してもらう以外には目的を持てない状態です。
複利の効果は長期でこそ発揮される
資産運用をする際、忘れてはいけないのは「複利」の概念です。一定期間ごとに利子が元本だけに付くケースを「単利」、元本と利子の合計に次期の利子が付くケースを「複利」といいます。
たとえば、毎年元本の10%の利子がつく口座に500万円を預けると、単利の場合1年後は元本の500万円に利子の50万円が追加されます。翌年も500万円に利子の50万円が付き、口座の中は合計で600万円になります。
一方で複利の場合、1年目は単利と変わらず元本の500万円に利子の50万円が追加されますが、翌年は「500万円+50万円」に10%の利子が付くので、55万円が追加されます。
まだ2年間の推移しか見ていないので大きな差はつきませんが、複利で運用していくと、指数関数的な伸びになります。下図は各金利で資産を運用した場合の例です。毎月5万円を積み立てると年間60万円貯金できるので、下図では毎年60万円を運用に回し、それぞれの金利で30年間複利運用した場合をシミュレーションしてみました。
(出所)株式会社マネネ作成。
当然、金利が高ければ高いほど資産が増えるのですが、10年ぐらいまではそれほど差がありません。にもかかわらず、その後どんどん差が広がっていくことがわかります。これこそが筆者が長期での運用を進める理由なのです。つまり、複利で資産運用をするのであれば、長期にすればするほど、その効果を享受できます。