はじめに

「仮想通貨」と聞いて何を思い浮かべますか?「技術はすごそうだけれど危ないもの」となっている人も多いかもしれません。

ただ、投機として見られることが多い仮想通貨ですが、それはほんの一面です。仮想通貨やブロックチェーンやスマートコントラクトなどのシステムは、決済や送金面を含め、新しい時代を創っていくものだと筆者は考えています。

先日、アメリカ最大のスーパーマーケット持ち株会社である Kroger社 は、2019年4月3日をもって、スーパーマーケットチェーン Smith’s社 におけるVisaカード決済の利用を停止することを発表しました。理由は手数料が高いからとのこと。代わりに「ビットコインのライトニングネットワーク※」の導入を検討しているようです。
※ライトニングネットワークとは、決済・送金スピードを劇的に高める技術

今回は、改めて、ビットコインを始めとする仮想通貨とはそもそもどんな仕組みなのか、仮想通貨はどのように広まっていくのかなどを一緒に見ていければと思います。


仮想通貨は一般的に3段階の仕組みで成り立っている

私たちが普段使用している通貨(法定通貨)は、中央銀行(日本でいえば日本銀行)や国が発行・管理をし、電子マネーは企業が発行・管理をしています。しかし、仮想通貨には発行者も管理者も存在しません。

一般的な通貨でも偽造や盗難対策は重要で、紙幣には高度な印刷技術や特殊な紙が用いられています。同様に、仮想通貨においてもデジタルデータにつきものである偽造やハッキングの防止をする必要があります。そのために、仮想通貨ではある種の「暗号」が用いられています。

また、通貨として発行・流通させるには、仮想通貨のほとんどが発行・管理者がいないため、「自動的に流通する」仕組みが必要です。

以上を前提として、仮想通貨の仕組みを理解するには、3段階に分けて考える必要があります。仮想通貨の代表である「ビットコイン」を例にとって考えてみましょう。

(1)電子署名を用いて、ビットコインを送る
(2)取引をブロックチェーンに記録する
(3)ブロックチェーン改ざん防止のために、プルーフ・オブ・ワーク(PoW)の計算を行なう

まず、(1)の「電子署名を用いて、ビットコインを送る」です。インターネット上で仮想通貨の受け渡しをするためには、「送金したのは署名者で、他の人ではないこと」、「通信途中で金額などの書き換えがないこと」、「送金者は、送金した事実を後になって否認できないこと」の3点が必須となります。「なりすまし」「改ざん」「否認」を防ぐために必要なのが電子署名ということです。

次に、(2)の「取引をブロックチェーンに記録する」です。これは第三者による取引記録の改ざんを防ぐためのシステムであり、世界中に存在するユーザーによって維持されています。取引記録は「ブロック」と呼ばれ、それが「鎖(チェーン)」のようにつながれているので、ブロックチェーンと呼ばれます。

最後に、(3)の「ブロックチェーン改ざん防止のために、プルーフ・オブ・ワークの計算を行なう」についてです。プルーフ・オブ・ワークを直訳すると「仕事量による証明」です。これは、悪意のあるハッキング等による偽造を防ぐために、「偽造するためにはより多くの仕事量を費やさなければならない」としています。

プルーフ・オブ・ワークを実行する人を「マイナー(採掘者)」と呼び、この行為を「マイニング(採掘)」と呼びます。マイニングとは、「特定条件を満たすランダムな数字を計算するための作業」であり、コンピュータの計算能力と、コンピュータを動かすための電気を大量に使います。

このマイニングに報酬を与えることによって、悪事を働くよりも、正解を出して報酬を得るほうが、経済的メリットが大きくなるように設計されているため、偽造を防ぐことができるわけです。

こうした一連の仕組みがあることによって、通貨としての機能を維持するとともに、「その通貨を欲しがる人がいる」という状態をつくり、その需要の多寡によって価値が維持されています。

その結果、仮想通貨には発行者も管理者も存在しないにもかかわらず、発行・流通が自主的に行なわれる(自動化されている)のです。

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