はじめに

離婚が少ないことは“諸手を挙げて万歳”なのか

次に、離婚率が低いエリアを見てみたいと思います。東京都が2位の福井県を大きく引き離して離婚率が低いことがわかります。東京都について「大都会=冷めたイメージ=離婚」と考える人には、驚く結果かもしれません。

図2

とはいっても、東京都は生涯未婚率において男女ともに全国1位の未婚化エリアでもあります。むしろ、結婚に男女がなかなか踏み切らないので、離婚も少ないのかもしれません。「石橋を叩いて低離婚化」「石橋を叩きすぎて高未婚化」という可能性が東京都について指摘できます。

また、出生率のデータと合わせて考えると、沖縄県は全国1位の出生率かつ離婚化率です。愛情を失った男女関係の終了と次の恋愛行動へのリスタートがサクサク行われる結果、若い段階で男女が妊娠するような関係に到達する機会が多いのかもしれない、という見方もできます。

高離婚率+高出生率の沖縄とは逆に、あるエリアで離婚率が低いといっても、そこでは離婚に対する社会の風当たりが強く、前の冷え切った愛情関係に縛られたまま男女の年齢が上がっているからだとすると、夫婦関係は継続しても、それ以上子供を授からない夫婦が多い結果、低出生率となる、という可能性があります。

実は、東京都の島しょ部を除く自治体の出生率と離婚化関係を重回帰分析すると、「(他の要因を受けず純粋に)高い離婚化エリアほど出生率が高くなる」という分析結果が出ています(ニッセイ基礎研究所・基礎研レポート2017年08月14日筆者分析)。

時代の変化が「リスタート」を生む?

日本とは逆にアメリカにおいては、上昇していた離婚率が近年、下がってきています。1990年代までと比べて明らかに離婚が減少している理由として、経済学者や社会学者は「“時代の変化”が結婚感に織り込まれるからではないか」という指摘をしています。

経済学者や社会学者の離婚減少説を簡単にまとめると、次のようになります。

「良妻賢母であるべき」「親や一族が決めた結婚であるべき」という発想が根強かった親の時代の結婚観を引き継いで最初は結婚したものの、その価値観が時代とともに絶対視されなくなった。


そこで1990年代までは「親世代の理想的な夫婦の形ありき」ではなく、本来のありたい姿に男女関係をリセットするための離婚が発生した。しかしその後、さらなる時代の変化の中で、最初から過去の結婚観ではなく、自分の愛情優先で結婚したカップルが増えてきたので離婚しなくなった。

日本の結婚は今、1990年代までのアメリカの過去の価値観からの脱却期の結婚に近しい状況にあるのかもしれません。

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