はじめに

3月15日にリニューアルオープンした阪急メンズ東京。国内外から厳選したブランドを地下1階から地上7階まで、売り場面積1万1,000平方メートルの中に散りばめました。

その中でも異色の輝きを放っている店舗が、6階にありました。男性向けのセクシャルアイテム「TENGA」が初めて出店した常設店舗です。

これまでの百貨店の常識では考えづらい店舗を、なぜ阪急メンズ東京はテナントとして招き入れたのでしょうか。阪急阪神百貨店とTENGA双方の思惑と、今回の出店の意義を深掘りしてみます。


Tシャツやマグカップも販売

阪急メンズ東京の6階、「オニツカタイガー」「ヒステリックグラマー」という人気ブランドが並ぶエリアの角地に、TENGA初の常設展はありました。

通路に面した場所には「愛と自由と」と書かれたモニュメントの横に、TENGAの巨大なオブジェを陳列。一目でTENGAの店舗だとわかります。

店内には、一般的なTENGAのラインナップのほかにも、ロサンゼルス発のストリートブランド「RIPNDIP」などとのコラボカップや、Tシャツをはじめとしたアパレル、アメリカのビンテージデザインを意識したマグカップなどの雑貨が並んでいます。


TENGAをモチーフにしたTシャツも販売

オープンした3月15日は、TENGAが初めて世に出てから、ちょうど5,000日目。当時から「性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく」というブランドメッセージを掲げてきたTENGAの松本光一社長は「TENGAが“表通り”に立った節目の日」と感慨深げに語りました。

阪急から声をかけたワケ

これまでの業界の常識では考えられなかったTENGAの常設店。最初に声をかけたのは、なんと阪急阪神百貨店のほうだったといいます。同社でモードファッションの責任者を務める民谷啓マーチャンダイザーは、出店の経緯を次のように説明します。

2011年にオープンした阪急メンズ東京は、売上高が前年を下回ったのが2016年度の1度だけと、好調に推移してきました。しかし、この7年間で世の中が大きく変化。多くの男性客の間で個性的であろう、自己の充足を求めたいという欲求が強まると同時に、銀座に外国人観光客が増え、街の姿が多様化しました。

現状でも売り上げはそれなりに取れているけれど、この先を考えると大幅に転換するタイミングかもしれない――。そんな思いが阪急阪神百貨店の背中を押しました。「今までも優秀な“6、7番バッター”でしたが、せっかく東京にあるので“1番バッター”として、新しい百貨店像を実験していく店にしていきたかった」(民谷さん)。

では、多様な個性を持った複数のターゲットに来てもらうには、どんな店づくりが必要か。マーケティングを重ねた結果、たどり着いたのが、それぞれのターゲットにとって、それぞれのフロアが自分の好きなものの集合体=冒険基地にしようというものでした。

「6階にTENGAがあることは必然」

その中でも、最も尖った生き方が好きで、反骨精神があり、情熱的に生きている人たちを誘客しようというのが6階。1、2階が主流のファッションブランドが入っているのに対し、時流に縛られたくない顧客をターゲットにした6階は、ただ単にブランドを並べるだけでは違う。

「こうした人たちの心を本当に揺さぶるものは性、セックス。その先にファッションがあるのではないか、と考えました」(民谷さん)


TENGA初の常設店は阪急メンズ東京6階の角地に出店

確かに6階を歩いてみると、従来の百貨店の売り場づくりとは異なる面が垣間見られます。TENGA売り場のほかにも、避妊具ショップ「コンドマニア」として初となる自動販売機も設置されています。

「6階にTENGAがあることは必然」。民谷さんはそう力説します。見た目のアート感だけでなく、機能の幅や品質の良さを追求している点が「ブランドファッションに通じる部分がある」(同)というのが、その理由です。