はじめに

将来の資産形成を考える場合、株式は1つの重要な運用ツールであり、中長期を見据えて成長の見込める銘柄に着目するのが投資の王道です。とはいえ、10年後、20年後、30年後を予測し、技術革新の先端を行く企業や業種を予測することは困難です。中長期を見通すことが難しい点も、株式投資をためらってしまう1つの理由かもしれません。

しかし、変化が激しい世の中でありながらも、当初の予想から方向性がそれほどぶれることなく、見通せるデータがあります。それは人口データです。人口予測のように、ある程度見通すことができる将来像をもとに、手堅く中長期投資を行うのも1つの方法でしょう。

今回は、今後世界的に人口が増加するという人口予測に基づき、これから着実な成長が期待できる業界についてご紹介したいと思います。


世界の人口増加が追い風となるのは“化粧品業界”

需要量が人口に比例しているケースは多く、人口増メリットを受ける業界は多数あります。そうした中、技術革新によって他のものに代替されたり、大量生産や人件費の安い地域への生産拠点のシフトなどにより、価格破壊が起こったりする可能性が低い業界の1つが化粧品業界です。

化粧品は、人口増による数量効果が見込めるだけでなく、他に代替できるものはないうえ、価格が比較的安定している恵まれた業界といえます。

化粧品は人間の美しくなりたいという基本的な欲求に応える商品であるため、安ければいいというよりは、むしろできるだけいい商品を使いたいという意識の消費者が多いと考えられます。しかも、価格の高い化粧品を使ったほうが心理的な満足感を得られるケースがあることなども加味すると、価格競争とは距離を置いた特殊な商品といえるでしょう。

化粧品は、生きるうえで不可欠ではありません。しかし、美しくなりたいという人間の欲求がある限り、いつの時代でも必要な商品といえるでしょう。しかも、使用したらなくなる消耗品であるという点では、食料品に近く、人口が増えれば、消費量が増える商品です。実際、世界の化粧品市場は着々と伸びています。

新興国の経済力の向上は需要と価格の両面でプラス寄与

人口増に加えて、化粧品の消費増に欠かせない要素は経済力です。化粧品は、所得が増え、経済的に余裕が出てくるにつれ、新たに購入する、購入品目を増やす、今までより高価格の商品を購入するといった形で消費金額が増えていくような商品であるためです。

実際、1人当たりGDPの高い国、すなわち先進国において1人当たり化粧品金額(≒支出金額)が多いことがわかります。逆に、先進国に比べて1人当たり金額の小さい新興国の潜在成長余力は大きいといえます。

世界的な高齢化の進展も価格面で追い風に

人口増の一方で、先進国を中心に高齢化が進展しています。しかしその先進国の高齢者においては、定年後に名目所得が減少しても、相対的に多くの富を保有し続ける傾向が強まっています。また世界的な少子高齢化の流れから、とくに先進国では高齢の労働者が増加しており、グローバルでもこの傾向は広がると考えられます。

資産を持ち、収入を得ている高齢者が増えていくと、全体の消費行動にも変化が出てくるでしょう。高齢者は、多くの量を買わないけれども、良質なものを求め、価格に左右されにくく、ブランドに忠実といった傾向があるためです。

また、高齢者が働いて社会とつながりを持ち続けることは、人から良くみられたいという意識の醸成にもなるため、化粧品のニーズは高まると考えられます。高齢者の消費行動の特徴と相まって、化粧品業界、中でもブランド力をもつ商品を販売している大手メーカーにとっては良好な環境といえるでしょう。

株式投資といえども手堅い投資方法もある

今、見えている様々なリスク要因が消えてから投資しようとすると、投資に踏み切れないまま時間がたち、後になってから、あの時に買っておけばよかったという後悔が残ります。そうならないためにも、まずは投資をやってみようと前向きに検討してみてはいかがでしょうか。

ただ、いざ投資しようと思っても、銘柄を選びあぐねてしまい、なかなか投資に踏み切れないかもしれません。こういった時は、自分の投資スタンスを改めて確認してみましょう。

長期で手堅い投資をしたいというスタンスであったなら、相対的に確実性が高いと思われる事象を根拠に銘柄を選ぶのも1つの方法です。その例として、今回は化粧品業界を取りあげました。

世界的な化粧品大手のP&G、エスティ ローダー、資生堂、花王の株価を見ると、長期投資の観点からは非常に魅力的な動きとなっています。加えて、配当の魅力も見逃せません。P&Gの例でいうと、1990年に投資して2018年まで持ち続けた場合、受け取る配当累積額は投資金額の4.2倍に達する計算になります。長期で持ち続けると、意外と手堅い投資といえるのではないでしょうか。

<文:投資情報部 花岡幸子>

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