はじめに

慶應義塾湘南藤沢の英語入試は他校にインパクトを与える?

<モリの目>(森上展安)

タカの目さんから、英語の入試の受験者数が660名になっていて、前年の1.8倍にもなるというご指摘がありました。

エポックメイキングな事件(?)も採り上げられていました。一つは慶應義塾湘南藤沢が英語選択入試を実施したこと。もう一つは都立高の入試で2021年度からスピーキングの入試が行われるとありました。

この二つの事件は時系列で繋がっていることにお気付きになると思います。

そうです。今春の中1生が中3になって都立高入試を迎えると、都立高入試に新たにスピーキングテストが課されるということで、この二つは同じ学年のお話なのです。

なぜ新中1生からなのか。お分かりのように新しい学習指導要領にこの学年から移行するからですね。新学習指導要領は小学生の段階で現状の中2レベルまでをほぼ修了することになっています。どうしてそうなるのかというのは、中学校2年分の内容が小5、小6に配分されるからです。

そうだとすれば、これまでは中3生で英検3級を取得することが達成基準でしたから、中学入試でも英検3級に達成目標が置かれるのは当然です。タカの目さんの文中にも、山脇が英検3級を取得していると入試が免除される仕組みを作ったとありました。これなどはまさにこれから起こる基準の示し方であり、新しい入試のスタイルとも言えます。

これまでは新学習指導要領への移行期ですから、小学校での取り組みも様々であったはずで、現に慶應義塾横浜初等部で英語を学んだ児童が進学してくるのに合わせて慶應義塾湘南藤沢中等部が実施した英語入試のレベルは、タカの目さんも書かれているように「英検2級~準1級程度」のハイレベルでしたね。まさにワンランク上の習熟度であったわけです。

しかも4技能をばっちりテストされるようですから、ボキャブラリーとリーディングはなんとかというレベルでは突破できません。

ただ、英語はこの「検定」のような考え方で運用能力を測られます。達成基準が明確で、本来は1点で落ちたり合否が分かれたりしないことが何にも代えがたい良さだと思います。

集団準拠のテスト(相対評価テスト)のように受験生の中で相対的に上位でなければならないテストと違って、努力の方向と基準が明確ですから、しっかり見通しを持って対処すれば目標達成はしやすいと思います。

付属小を持つ難関校を目指す家庭は、今年度の入試要項に注目

さて、中1から新学習指導要領が導入される今春の中学新入生は、英語4技能で学ぶ最初の学年だと申しました。だから、彼らが高校入試をする時点で都立高入試のようなスピーキングを測る入試が登場するとも言いました。

小学校の場合、教科で導入されるのは来年度の小5からですから、新小4生が中学入試をするタイミングなら他教科がそうであるように、小学校で学んできたことを前提に入試を課すことは、小学生に過度の負担をかけることにはなりませんね。

とはいえ、4科目に英語を足して5科目にするとなると、小学生の負担が重くなりますから、慶應義塾湘南藤沢中等部がそうしたように「4科目」か「国算英の3科目」を選択するというかたちが多勢になる可能性が高いと思います。

特に、現在、国算と国算社理の2科4科選択入試を課している私立中学にあっては国算と英語という入試への移行はスムーズだと思われます。

ただ、タカの目さんの関心事である難関校がどうなるかという点について申しますと、難関校でも付属は慶應の動きに関心を払っていますし、慶應同様に下から上がってくる付属小学校生の英語の達成度が一定のレベルにありますから、これに合わせるという要請もあります。

一方、付属小を持たない多くの進学難関校は、英語つまり語学力は国語で十分測れるし、学習への誠実度が問われる英語は中学受験のための算数の達成度で類推できると考えているのではないかと思われます。

とはいえ、帰国子女の取り組みが熱心な学校やグローバル化に積極的な姿勢の学校は、今の新小4生が中学受験をする3年後に英語を導入する可能性が少なくないと思います。

ただ、そうなると中学受験準備からすると、今春にはその旨をアドミッションポリシーとして公表する必要があります。英語入試をする学校はその意味で今年度中にその旨の公表をするところが多くなると考えられます。その意味で4年生はお目当ての学校の入試要項の変化があるか注目したいところです。

この記事の感想を教えてください。