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株価の上値を抑える「混迷ブレグジット」の根本問題

個人投資家は要チェック

北アイルランドをめぐる駆け引き

DUPがメイ首相の離脱案に異を唱えていることについては、やや理解の難しい面があるかもしれません。というのも、DUPは「キリスト教原理主義」を掲げるプロテスタント系の政党。英国と北アイルランドのつながりを重視する「ユニオニスト」の最右翼に位置付けられているからです。

ブレグジットの具体案をめぐる与党内の対立のきっかけになったのは、離脱案に含まれている「バックストップ」条項。イギリスのEU離脱でアイルランド島北部のイギリス領の北アイルランドと、陸続きで接する南のアイルランドに物理的な壁や検問所ができるのを防ぐため、離脱後も英国全体をEUの関税同盟にとどめようという安全策です。

「バックストップ」条項に関しては当初、EU側が北アイルランドだけを関税同盟に残す案を主張していました。しかし結局は、これに反対するイギリスに譲歩した経緯があります。

何が事態を難しくしているのか

となると、北アイルランドとイギリスの関係を重視するDUPがEUの当初案に難色を示したのはわかるとしても、イギリス全体が関税同盟にとどまるという現在の案を支持しないのは腑に落ちない、とも思えます。

あるエコノミストは「農産品の取り扱い、付加価値税など、いくつかのルールに関し、国境間の物理的な壁(ハードボーダー)の構築を防ぐため、北アイルランドだけEUにそろえなければならないことを懸念しているのではないか」と指摘しています。

北アイルランドで1960年代から長きにわたって続いたカトリック系とプロテスタント系住民の武力紛争に終止符を打ったのが、1998年に北アイルランドのベルファストでイギリスとアイルランド両国が締結した和平合意。成立が聖金曜日だったため、「グッド・フライデー・アグリーメント(聖金曜日合意)」とも称されています。

「この合意に最後まで強く抵抗したのもDUPだった」(前出のエコノミスト)といいます。離脱案に反対するのも、北アイルランドのアイルランド編入に対する強い警戒感の表れといえるでしょう。

金融市場への影響は?

金融市場がもっとも恐れているのは「合意なき離脱」です。その可能性が高まれば、マーケットの混乱は避けられないとみられます。

一方、与党内の意見がまとまらずにメイ首相がこのまま退陣し、「解散総選挙」といった選択肢が浮上してくるようだと、マーケットもポジティブに受け止めるかもしれません。野党・労働党は「再国民投票」を主張しており、再投票が実現すればブレグジットに対して「ノー」という意見が過半数を上回る、との見方が少なくないためです。

いずれにせよ、EUがイギリスに突きつけた最後通告の期日まで残された時間は多くありません。ブレグジットの方向性が定まらない限り、株式市場も身動きの取りづらい状況が続きそうです。

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