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セブン、「24時間営業の見直し」は根本的な解決策なのか

眼前に横たわる“2つの疑問”

24時間営業をめぐる問題は、経営トップの交代にまで波及しました。セブン-イレブン・ジャパンは4月4日の取締役会で、古谷一樹社長が退任し、後任に永松文彦副社長が昇格する人事を決定しました。コンビニ24時間営業の見直しをめぐる問題でフランチャイズ(FC)加盟店とトラブルが起こった問題を重視し、経営体制を刷新します。

人手不足から24時間営業を維持できなくなった東大阪市のFC加盟店オーナーが、本部の了承のないまま営業短縮に踏み切った問題が起こったのは、2月でした。契約違反として違約金発生の可能性が議論となったことで、社会問題として一気に注目が高まりました。

人手不足が深刻な中、24時間営業を続けるために一部のオーナーが長時間労働を強いられている実態が明らかになってきたからです。FCオーナーに同情する声が広がったこと、他のFCオーナーからも24時間営業見直しの要望が届いたことを受け、セブンは3月21日から直営店で短縮営業の実証実験を始めています。

ここで、2つの疑問が浮かびます。働き方改革が叫ばれる昨今、なぜFCオーナーは過酷な労働環境に置かれたままなのか。そして、深夜はほとんど買い物客が来ないのに、なぜセブンは24時間営業にこだわるのか、です。


24時間営業を続けてきたセブンの事情

まず、FCオーナーが過酷な労働環境に置かれる理由ですが、これはFCオーナーが個人事業主であることによります。直営店の店長ならば、従業員なので残業規制などで守られます。ところが、FCオーナーは労働組合法上の「労働者」には当たらず、団体交渉や働き方改革の対象に含まれません。

かつて、外食業で直営店の店長が長時間労働にさらされている問題が明らかになったことがありました。店長は管理職であって一般従業員でないので、残業規制の対象外となっていた時に起こった問題です。今、店長は“名ばかり管理職”で実態は労働者と認められ、働き方改革の対象に含められています。

もし本部が優越的な立場を使ってFCオーナーに過酷な労働を強いているとしたら、時代の流れに反するのは明らかです。いずれFCオーナーを守るルールができる可能性があります。セブンはそれを先取りし、24時間営業の見直しに動き出しました。

そして2番目の疑問ですが、なぜセブンは24時間営業にこだわるのでしょうか。それは、効率的な店舗運営や商品供給ネットワークを維持するためです。コンビニの事業モデルは1店舗だけでは成り立ちません。特定地域に集中的に出店し、そこへ協力工場で製造した食品などを効率的に配送することで成り立っています。

各店舗は、夜間に清掃や商品の入れ替えなどの作業をこなすとともに、24時間体制で商品を補給するトラックの到着を待っているわけです。夜間に営業しない店が増えると、道路が混み始める早朝に配送を集中させる必要が生じるので、供給網の効率は著しく低下します。

業績に影を落とす24時間営業の重荷

このような24時間営業をめぐる歪みは、セブン-イレブン・ジャパンの親会社であるセブン&アイ・ホールディングスの業績にも影を落としつつあります。

同社が4月4日に発表した2019年2月期決算は、本業の儲けを示す営業利益が前期比5.1%増の4,115億円と、最高益を更新しました。しかし、利益の内訳を精査すると、諸手を挙げて喜べる内容ではなさそうです。

事業セグメント別の営業利益を見ると、海外コンビニ事業が922億円(同16.7%増)と大きく伸びた一方、国内コンビニ事業は2,467億円(同0.6%増)と伸び悩みました。海外での成長が軌道に乗ったことで、国内の競合激化や人件費上昇などを補った格好です。

続く2020年2月期について、同社は営業利益が4,200億円と、最高益が続くと予想しています。しかし、増益率は2019年2月期からさらに縮んで、前期比2.0%増という見通し。海外利益の拡大が続く半面、国内は消費増税対策、競合激化、24時間営業の見直しなどで、引き続き利益の伸びが抑えられると予想しています。

営業時間短縮は抜本的な解決策になるか

こうした状況を変えようと、セブンは実証実験でさまざまな営業時間の短縮を模索しています。午前7時~午後11時という「セブン-イレブン」の社名の語源となった営業時間のほか、午前5時から翌日午前1時までというパターンも試しています。

実験の結果はまだわかりませんが、私は夜間に4時間だけ(午前1時から5時まで)店を閉めても、店舗運営コストはほとんど減らないと思います。店舗を閉めた後、1時間は残務処理が必要です。開店1時間前には開店準備が欠かせません。つまり、店員が店を離れられるのは2時間程度にとどまると考えられます。

店を閉めている時間帯も、光熱費はほとんど減らないでしょう。食品を保存しているので冷蔵庫が必要だし、防犯上、ライトもすべて消すわけにはいかないからです。

もし完全に無人にするならば、レジを閉めて現金を銀行の夜間金庫に入れたり、警備保障会社と別途契約したりする必要が生じる可能性もあります。夜間営業をやめるならば、思い切って午後11時から午前7時くらいまで閉めないと、意味がないかもしれません。

夜間営業しない店が増えたら、開いている店の売り上げが増えるでしょうか。これも、あまり期待できないと思われます。住宅街の店舗では、閉めたら近隣の住人の買い物がなくなるだけと考えられるからです。

今後、実験によってさまざまなことがわかってくると思いますが、単純な営業時間の短縮だけでセブンを取り巻く諸問題を解決させることは難しいかもしれません。より広範な意味での店舗運営の効率化にどんな手を打てるかが、同社の今後を左右しそうです。

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