はじめに
若い女性を中心に広く支持を集め、現在最も勢いがあるSNSとされる写真・動画共有サービス「Instagram」(インスタグラム、通称:インスタ)。
2010年にサービスを始め、現在はFacebook配下となった同サービスを、今、全世界でおよそ6億人が利用していると言われています。日本でも直近1年半でユーザーを2倍に急伸し、月間1,600万人の利用者数を誇ります(2016年12月現在)。
このインスタが、今、若者の消費行動に大きな影響力を及ぼしています。
SNSきっかけで購買、4人に3人
インスタグラムのアプリを開くと、かわいいファッションで着飾り、流行りのメイクで決めた女の子の自撮り画像や洗練されたインテリアで統一された部屋、スタイリッシュな手作り料理など、たくさんの画像が目を楽しませてくれます。
女優やモデルなども多くアカウントを公開していますが、インフルエンサーとして注目されているのは著名人だけではありません。普通の学生や主婦がインスタ発で支持を集め、レシピ本やダイエット本など書籍を出版する例も多くあります。
このインスタの特徴はなんといってもビジュアルの強さ。視覚的に訴えてくる写真は、「このコーディネートかわいい」「私もインテリア真似してみようかな」など私たちの心をダイレクトに刺激します。
実際に、電通総研メディアイノベーション研究部が、SNSへの関与が高い15~34歳の男女1,600名を対象に行った「若年層のSNSを通じたビジュアルコミュニケーション調査」によると、「およそ4人に3人はSNSの他のユーザーの写真や動画の影響で、なんらかの購買または消費行動を行ったことがある」と判明しました。
特に、ファッションなどビジュアルが鍵を握るものにおいて「若年層ではネット検索よりもSNS検索を利用する傾向がある」と同研究部は考察します。
「#」を制するものがインスタを制す
一般的なSNSと同様にフォローした人の投稿を眺める機能がメインのアプリですが、加えて、インスタ攻略のカギを握るのがハッシュタグ(#)。
簡単に説明するとラベルのようなもので、写真や動画の投稿文に「#」をつけて内容を補足したり、カテゴリを示したり、写っている商品の解説をしたりすることができます。
この機能はインスタだけでなく、FacebookやTwitterなど多くのSNSに実装されていますが、インスタでは特にこのハッシュタグを使った投稿が盛んです。例えば、「#ママコーデ」「#おうちごはん」「#春メイク」「#ユニクロ」「#バレンタイン」など。
ハッシュタグは自動でリンクになって、同じハッシュタグの投稿一覧を簡単に見られるようになるので、気になる商品の評判を見たり、実際の着用画像を眺めたり、検索と同じようにインスタ内を探すことが可能になります。
「#インスタ映え消費」に楽天も注目
企業もインスタ内での消費者の動向に目を光らせています。
毎年、楽天が「楽天市場」の膨大な購買データをもとに作成し、1年間の人気商品を発表している「楽天市場ヒット番付」。2016年は、東の横綱として「#インスタ映え消費」がランクインしました。
同社は、若い女性がスマホの向こう側にいる友人や仲間に自分の価値観を届けるためには「“インスタ映え”する商品、場所、人、体験が不可欠」と分析。
昨年は、“インスタジェニック”なスイーツやアイスクリームなどが絶大な人気を集め、特にインスタから人気に火が付いたラウンドビーチタオルは前年比60倍以上の爆売れを記録したそうです。
「インスタなどで話題になり始めたときに、その流行を予測。店舗側に情報共有し供給を強化した結果、大ヒットにつながった」と今回のトレンドの裏側について教えてくれました。
また、気になる今年のトレンドを「昨年は有名人からの拡散が話題になりましたが、今年は一般の方発のモノがもっと流行るのでは」と予測します。
具体的には、自宅でレストランのような贅沢な一品を楽しめる「ミールキット」や、インスタ新機能「Instagram Stories」とも相性のよい「持ち手を変えられるバッグ」など。
消えてなくなるライブ動画機能の登場により、静止画だけでなく動画でも目を惹くような“変化を楽しむ”商品がヒットの中心となりそうです。
「企業も一般消費者も、『目立つ』『目につく』『話題になりやすい』ことが重要になっています。インスタが普及すればするほど、自分の投稿が埋もれてしまうという傾向もあります。今後は、より工夫を凝らしたものが出てくる予感です」(楽天担当者)。
インスタで買い物できる未来も?
2016年11月、インスタグラムは「コーチ」「ケイト・スペード ニューヨーク」など複数のパートナーと協力して、フィードから簡単にショッピングができるようにするためのテスト運用を始めたことを発表しました。
もしこの機能が一般化されれば、ユーザーはアプリを離れて、改めて商品を検索する必要がなくなります。2017年3月現在、まだ前向きな続報はありませんが、大きく消費を動かすビジネスチャンスを公式も狙っています。