はじめに

日本の株式市場は、4月に入って方向感のない値動きが続いています。

昨年までは、米中貿易戦争による悪影響で、中国経済の急減速が警戒されていました。しかし、2019年に入り、中国政府が相次いで打ち出してきた金融財政刺激策により、中国の景気指標は急回復。米国の経済指標も底堅い成長を示すデータが相次いでいます。

一方で、日本や欧州の経済指標は低迷。海外投資家の物色対象から日本の株式市場は外れ、値動きも乏しくなっているのです。また、国内の個人投資家も、改元に伴う10連休を控え、積極的な売買を手控えています。

このように平成時代の終わりが迫っていますが、平成の30年間に日本経済の景色は大きく変わりました。バブル崩壊から始まり、不良債権の処理に伴う金融危機、ITバブルや小泉構造改革、リーマンショックやアベノミクス……と経済的にも多くのイベントがありました。このように激変する経済環境の中で、時価総額を大きく膨らました企業にはどのようなものがあったのでしょうか。


独自性の高い部品メーカーが上位に

下の表は、平成が始まった1989年1月9日から2019年4月17日の間の時価総額増加率ランキングです。

ランキング

この中で1位となったのは、精密小型モーターの開発・製造を手掛け、世界シェア1位の製品を多数持つ日本電産です。同社は、平成が始まる前年の1988年11月 に、大阪証券取引所第2部と京都証券取引所に株式を上場しました。創業者である永守重信氏が一貫して経営の中心を担い、平成の間に時価総額をなんと65倍に引き上げています。

続いて2位となったのは、自動制御機器や計測機器などを製造・販売するキーエンスです。1987年に大阪証券取引所市場第2部に上場し、持続的な成長を続けながら高収益を維持してきました。

このほか、7位につけた自転車の変速機、ブレーキ部品などを生産するシマノなど、独自性が高い部品メーカーが上位に多くランクインしています。

国内のノウハウを海外に横展開

4位にランクインした育児用品大手で哺乳器国内トップシェアのピジョンや、生理用品や乳幼児・大人向け紙おむつ大手のユニ・チャームなども、時価総額を大きく膨らませています。これらのメーカーは、国内市場は飽和状態にあるものの、中国など海外市場での販売を大きく広げてきました。

このように、独自の技術力で開発した部品や日本国内で培った商品が、グローバル市場で高く評価された企業が、平成の間に大きく時価総額を膨らませた事がわかります。

このことは、平成元年以降に上場し時価総額を大きく膨らませた、ユニクロなどを運営する製造小売り大手のファーストリテイリングや、グローバルにハイテク企業に投資するソフトバンクグループなどでも、共通しています。

5月に始まる令和の時代においても、この流れは変わりそうにありません。10連休の間に、今後グローバルに活躍する企業を探してみるのも良いのではないでしょうか。

<文:シニアマーケットアナリスト 窪田朋一郎 写真:森田直樹/アフロ>

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