はじめに
前回は株式の価値がどこから来るか、というお話しをしました。一つは会社の資産、もう一つは会社が生み出す利益でした。
株式が表すのは、会社の財産から負債を差し引いた「純資産」の価値で、その価値についた値段が株価なのです、という話でした。この時、同じ価値の「純資産」を持つ会社でも、多くの「利益」を上げる会社の方が株価が高くなる、ということもお話ししました。
今回はこの「利益」に焦点を当ててみましょう。
業績の動向を知るための「利益」
会社が商品を売り上げ、かかった費用を差し引いて残ったものが利益となるわけですが、株主のものとなるのは、負債に対する利息や税金まで支払った後、最後に残る利益です。これが「純利益」です。
前回は、純資産に対する利益率=ROEという指標をご紹介しました。この時用いた利益は純利益です。株主の持ち分に対する利益率ですから株主のものとなる利益を使うのが適切です。
しかし利益といわれるものはこれだけではありません。企業の決算を表したものには、「売上」と「純利益」の間に、「営業利益」や「経常利益」といったものを表示するのが普通です。
企業の経営状態や、業績動向を知るためには、「純利益」よりも「営業利益」や「経常利益」を用いる方が適切なのです。
営業利益は、売上から原材料費や営業費用を引いたものです。これを見れば、本業の実力が分かります。この営業利益から、借り入れに対して支払う利息などを差し引いたものが経常利益です。
同じビジネスを行っていても、借金の多い会社は経常利益が小さくなってしまうわけです。ここを見れば、本業の実力に加えて財務状態まで分かることになります。その先の純利益は、税金の支払い額や、通常の事業とは直接関係のない特別な利益や費用を計上したものなので、本業の動向を見るには、実はあまり適していないのです。
企業の善し悪しを見分けるために、これらの利益が増えているか減っているか、時系列で見るのは一つの方法です。もちろん、利益が増えて行っている会社が良いということになります。
売上に対する利益率で実力が分かる
利益の見方としてもうひとつには、売上に対する利益率を見るという方法があります。利益率は高いほど良いわけですが、業種によっても大きく違いますから、単純に何%なら高い・低いというわけにはいきません。
しかし、たとえば同じ業種に属する会社同士を比べてみるのは、意味のあることです。同じようなことをやっているように見えても、会社によってどうしてこんなに違うのか、と思うくらい利益率が違うというのはよくあることです。
利益率が高いということは、会社の成長に有利なだけでなく、業績がより安定しているということでもあります。たとえば少し極端ですが、利益率20%のA社と、2%しかないB社を比べてみましょう。この時、両社とも売り上げが100あれば、A社の利益は20、B社の利益は2です。
利益率が20%ということは、反対側から見ると売上に占めるコストの比率が80%ということです。今A社で、コストが80%から81%に上昇したとしましょう。すると利益はどうなりますか?…そう、20だったものが19に減ります。5%の減益です。
一方、B社の売上に占めるコストの比率は98%です。同じようにコストが98%から99%に上がったとしましょう。すると利益は2から1に半減してしまうことになります。コストの上昇率としては、A社よりもむしろ小さいのですが、利益に与える影響は全く違います。
こうしたことも業種の事情は様々なので、利益率が低い企業がすべてダメなわけではありませんが、一般には利益率が高いほうが、業績は安定的と言えるでしょう。