はじめに
春の味覚といえば、タケノコ、菜の花のほか、ふき、ウド、タラの芽、ぜんまい、ワラビなど、ちょっとクセのあるほろ苦さが大きな魅力。
なかでも、菜の花やウド、タラの芽、ふきなどは基本的に生で売られているため、ほぼ春にしか巡り合えません。タケノコの場合は、水煮の加工品として年中買うことができますが、生のモノとはやっぱり別物。
その一方で、ぜんまいやワラビは、おそらく袋詰めされた水煮で食べるケースが多いのではないでしょうか。
山菜は、炊き込みご飯や煮物にしたり、うどんやそばに入れたりしても美味しく、「日本の食」のイメージ。でも、不思議なことに、スーパーで売られている、ぜんまいやワラビを中心とした水煮の加工品「山菜ミックス」は、圧倒的に中国産などの輸入モノが主流です。もちろん国産のものもありますが、割合としてだいぶ少ない印象で、値段が高いうえに、あまり多く取り扱いがありません。旬の春でも同じです。
なぜ山菜は、輸入モノが多いのでしょうか。日本の食のイメージがあるのに、意外と日本では採れない、作れないものなのでしょうか。「山菜文化産業協会」に聞きました。
ぜんまいもワラビも、輸入品は6~7割
「山菜の生産量を比較してみると、ワラビの場合は国内生産が760トン。そのうち、天然モノと栽培モノとは半々くらいの割合です。それに対して、輸入品は中国産とロシア産が多く、1,600トンとなっています。つまり、全体の7割程度が輸入品ということですね」(広報担当者)
また、ぜんまいの場合は、国内産が37トン。そのうち、栽培は少なく、天然が8割程度だとか。その一方で、輸入品はほぼ中国産で、71トンで、全体の65%ほどが輸入品になります。ちなみに、国産の山菜は、村や山で採れたものや栽培したものを、産地の直販や、道の駅などでの販売、業者へ直接おろすなどしているそう。
「生で販売されているものはほとんど国産だと思います。また、生の山菜の場合は、天然モノが出回る時期、つまり春になる前に栽培モノが出回り、お値段も高いですが、旬の時期の天然モノなら、産地では比較的お手頃な価格で手に入るかと思います」
袋詰めの水煮でも国産モノは高くなる理由
では、生のものは国産が多い一方で、なぜ水煮の加工品となると、輸入品ばかりになるのでしょうか。広報担当者によると、山菜は基本的に限られた季節しか収穫できず、特にワラビなどは、新芽のうちしかとれないといいます。これは天然モノだけでなく、栽培モノも同じで、「収穫時期が限られているために輸入品に頼る割合が大きくなるのではないでしょうか」。
また、袋詰めの水煮にも、もちろん国産の商品はありますが、限られた時期に収穫されるため、どうしても値段が高くなってしまうそう。そのため、「高くても売れる」のであれば、もっと国産商品が出回るのではないか、ということでした。加えて、山菜の水煮の需要が「業務用」に多いこともあるのではないかと補足します。
確かに、山菜は大好きでも、通年でいつも食べ続けているかというと、そうでもない気も……。
そう思うと、通年で山菜を必要とする人は、街中やSAの立ち食いそば屋など、業者さんが中心で、大量買いするために安い業務用が最も消費されるのかもしれません。
山菜のハウス栽培は難しい?
最後にもう一つ疑問。普通の野菜は、ハウス栽培で通年作れるものが多く、価格も安定しているのに、山菜の場合はハウス栽培で育てるのは難しいのでしょうか。
「山菜の場合は、栽培が難しいというよりも、もともと山で採るもので、天然でなく栽培する場合も、山から持ってきたものを育てているだけなんです。そういった意味で、『山で採る』ものとしてのイメージが強いだけに、栽培の技術的な面では普通の野菜よりもだいぶ遅れているのかもしれません」
生の山菜を食べられる季節は、残りわずか。水煮でも国産のモノは高くなってしまう事情があるだけに、国産で安く生で食べられる時期には存分に楽しみたいものです。