2019年の年明け、ネットフリックスの番組「KONMARI ~人生がときめく片付けの魔法~(邦題)」がアメリカでヒットしました。アメリカ人の妻の勧めで番組を観た私は、片付けを超えて人生そのものが変わっていくストーリーに驚きました。

なぜ片付けの番組が、これほど多くのアメリカ人の心を揺さぶるのでしょうか。


「片付け」を超えた家族再生のドキュメンタリー

番組では「こんまり」こと近藤麻理恵さんが、アメリカの家庭で片付けのレッスンを行います。訪問する家庭は、洋服や小物、仕事や趣味のアイテムが乱雑に散らかっています。日本と比べるとはるかに大きな家なのに、むしろ狭く感じてしまうほどです。

そこにこんまりさんが現れ、片付けレッスンを行います。“Spark joy(ときめく)”ものをキープするというモノの選別方法や、うまく収納するための服のたたみ方を教えていきます。

どことなくエキゾチックな、まるで宗教的な儀式のような雰囲気の中、“Spark joy”という魔法の言葉と共に、小さな変化が起こり始めます。家が徐々に片付いていく。ここまでは、想定通りの展開です。

私が驚いたのはその後です。登場する家族はそれぞれ、人生や家庭の悩みを抱えており、それがもう1つのストーリーとして浮かび上がってきます。たとえば、子育てに忙しく、夫婦の会話が減ってしまった家族は、問題と正面から向き合い、家族の絆を取り戻していくのです。

こんまりさんのレッスンを受ける前と後、つまり、番組の最初と最後と比べた時、散らかっていた家が驚くほどキレイになるのは圧倒的な変化です。しかしそれ以上に感銘を受けるのは、レッスンを受けた家族の表情の変貌ぶり。どんよりと曇っていた表情が、まるで憑き物が落ちたように、晴れ晴れとした笑顔になっているのです。

崩れかかった家族の絆の再生。そこに自分たち自身を重ね合わせ、私を含め多くの視聴者が心打たれたのではないでしょうか。

“Spark joy”は魔法の言葉

ポイントとなるのは、こんまりさんは、決して、家族の悩みの相談に乗っているわけではないということです。

「片付けコンサルタント」を名乗るこんまりさんが教えるのは、あくまでも片付けのメソッドであり、人生や家族の悩みを解決しているのは、番組に登場する家族。こんまりさんは、いわば触媒となって、家族の絆の再生を間接的にサポートしているわけです。

では、どうやって? その謎を解くキーワードが、こんまりさんが何度も繰り返すあの言葉なのでしょう。

“Spark joy(ときめく)”

この服は、この小物は、あなたの心をときめかせますか。ときめくなら、キープしましょう。そうでないなら、「ありがとう」と言って捨てましょう。モノを手にとって胸に当てて、ときめくかどうかを判断している相談者の様子が、番組では何度も映し出されます。

その様子を見ているうちに、合点がいきました。あれは、自分自身の無意識に働かけるための“儀式”なのです。

(写真:ロイター/アフロ)