はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナー(FP)が答えるFPの相談シリーズ。今回は読者の家計の悩みについて、プロのFPとして活躍する深野康彦(ふかの・やすひこ)氏がお答えします。
39歳のサラリーマンです。妻、子供2人(8歳男・6歳男)がいます。共働きで世帯年収は1,300万円程度ありますが、私は50歳までには引退したいと考えています。引退後は、趣味でシニア向けのパソコン教室を開きながら、家賃などの不動産収入とREITなどの配当金(分配金)収入を、メインの収入として生計を立てることを夢見ています。現在の資産状況は下記の通りです。
<資産状況>
現金:400万円
株式等:4,000万円(現時点)
不動産:2件(実家:約1,500万円程度、自宅:約3,600万円で購入・ローン完済)
保険:4件(現時点での解約返戻金合計約1,000万円)
負債:0円(住宅ローン等、負債なし)
妻の資産:不明(約1,000万円程度?)
今後、株式などの資産が増えた場合は、できるだけ安全な資産に振り替えたいと思っています。現在の手取り(年収-税金)をできるだけ安全にキープするための方法にはどのようなものがあり、またどのように考えればよいでしょうか?
(30代後半 既婚・子供2人 男性)
深野: 50歳までに早期リタイアを考えられているようですね。
早くからライフデザイン(生き方)を考えていることには感心いたしますが、やはりそれなりの資産を持っていて、かつキャッシュフローを生む仕組みをしっかり作らないと、早期リタイアは絵に描いた餅になってしまうので注意してください。
趣味としてシニア向けのパソコン教室を開きながら、とのことですが、趣味の域を出ないでしょうから、ご質問にあるように不動産などから発生する家賃収入、REITなどの高配当の有価証券から発生する配当金などをメインにすべきだと思います。
「安全にキープ」はかなり厳しい
現在の手取りをできるだけ安全にキープしたいとのご希望ですが、安全にキープというのはかなり厳しいと言わざるを得ません。将来的に金利が上昇すれば、好金利の債券を購入する手立てが考えられますが、金利がどこまで上昇するかは定かではありません。
また、株式やREITなどの配当も将来的に増えていくでしょうが、まとまった金額を得るためにはかなりの金額を投資する必要があります。
つまり、有価証券から発生する配当金、利子などは、キャッシュフローの足しになる程度と控えめに考えた方が無難なはずです。
キャッシュフローを生むためには不動産がベースになると思いますが、人任せでは満足のいく結果を得るのは難しいと思われます。
不動産で成功している人は、投資ではなく事業と心得て、自分自身でフットワーク軽く動かれているようです。早期リタイアした後、不動産を事業と心得られるかどうかがポイントになるでしょう。
ご質問者の方は、そこまでやる気がありますか?
あるのでしたら、不動産がひとつの候補になるでしょう。ただし、人口が減少していくうえに、全国的に空き家が増加していることを考慮すれば、将来的に不動産収入を得ることはより困難になる可能性が高い気がしてなりません。
生活のダウンサイジングも視野に
不動産が難しいようならば、生活ベースをダウンサイジングしてはいかがでしょうか。現在は世帯年収が1,300万円(夫婦共働き)あると書かれていますが、この収入をキープするのはかなり高い壁と言わざるを得ません。
通常、早期リタイアや定年退職後は収入が減るため、現役時代よりも生活ベースはダウンサイジングするものなのです。
厳しいことを言うのは、仮に1番遅い早期リタイアの年齢である50歳でリタイアされても、公的年金を受け取るまで15年もあり、またお子さんの年齢を考えると長男は大学、次男は高校と教育費が最もかさむ時期であることから、かなりの資産を保有している必要があるからです。
早期リタイアしてはいけないというのではなく、安全にキープできる仕組みがほとんどない以上、もう少し現実的な生活をベースにしたプランニングを考えてみてはいかがでしょうか。
年齢から察すると、かなりの資産を保有されていますが、ご希望の早期リタイアを行うにはまだ道半ばまでいっていない気がします。早期リタイアができるように現実的なプランを考えてがんばってください。