はじめに
昔は、男性の下着について「ブリーフ派か、トランクス派か」なんて議論をよく耳にしたものです。「トランクス派」の「ゆったりしていて楽ちんで良い」とか、「ブリーフ派」の「ピッタリしているから落ち着く」などの言い分を聞いたことのある人も少なくないのでは。
しかし、気づくと今、男性の下着売り場において、ブリーフの占める割合は非常に少ない気がします。かつて「ブリーフ」と「トランクス」は二大派閥として語られていましたが、ブリーフのほうはいつからかだいぶ劣勢になっているのではないでしょうか。
しかも、その代わりに台頭してきているように見えるのが、「ボクサーパンツ派」。ブリーフは本当に減っているのか。もし減っているとしたら、なぜでしょうか。
男性下着はボクサーパンツが主流に
ワコールの総合企画室 広報・宣伝部に問い合わせると、同社製品の売上割合について、以下の興味深いデータを提供してくれました。
百貨店(ワコールメン):ボクサー70% トランクス20% ブリーフ10%
量販店(BROS):ボクサー50% トランクス40% ブリーフ10%
なんと「ブリーフ派VS.トランクス派」の二大派閥の争いどころか、全体の傾向としては、ボクサーパンツの構成比がすでに半数超えとなっているようです。
それにしても、ブリーフ派が占める割合は、百貨店、量販店ともに1割とは、予想以上に劣勢。いつから、なぜ劣勢になったのでしょうか。
「百貨店(ワコールメン)においては、詳細な理由と苦戦し始めた時期は不明ですが、某百貨店の昨年1年間のデータによると、前年比85%と苦戦傾向のため、百貨店におけるブリーフ派は減っている可能性は考えられます。また、量販店(BROS)においては、ブリーフユーザーが減少している印象は受けないのですが、受け入れられている購買世代としては40代以上の高い年齢層が多いようです」
ちなみに、他社商品をみても、新製品は圧倒的にボクサーパンツであることから、現在は「メンズの下着=ボクサー」が主流になっているという指摘でした。
ブリーフは「卒業」するもの
ところで、今回、男性のブリーフについて調べていく中で、もう一つ気になる点が浮上してきました。それは、ネットの掲示板で何件も見られた、小学生男子やお母さんなどからの以下のような質問です。
「僕はいま小6でブリーフを履いているんですが、いつからトランクスやボクサーに移行すべきですか」
「男の子は、何歳からトランクスに移行すれば良いですか」
かつて言われていた「ブリーフ派VS.トランクス派」という好みの問題ではなく、いつの間にかブリーフは「子どもの履くもの」になっているのしょうか。つまり、男性の場合、最初に出会うパンツがブリーフで、それを「卒業」して行き着く場所がトランクスやボクサーパンツということなのか。
日本アパレル・ファッション産業協会に聞いてみると、回答は以下の通りでした。
「メンズのアンダーウェアのデータはないので、確かなところはわかりませんが、やはりブリーフは幼い頃に履いていて、中学生くらいからトランクスに移行する子が多いのではないでしょうか」
10代後半から自分で下着を選ぶ
周囲の男の子のいるお母さんたちに聞いてみても、「小学校高学年くらいから」「中学くらいから」など、時期の違いはあれど、大まかに「ブリーフ→トランクスかボクサーへ」という流れを辿る子は多いようです。
では、なぜ大人になるにつれて、ブリーフを卒業していくのか。ワコール担当者はこう説明します。
「ボクサータイプは20代に多く、ブリーフは若い人ほど少ない傾向にあります。10代後半から自分で下着を選ぶことができ、見た目のカッコよさ、デザインの豊富さからボクサーパンツが好まれていると考えます」
ボクサーパンツは、一説によると、1992年にカルバンクラインが1910年代に流行した下着「ユニオンスーツ」を現代版にアレンジし、トランクス+ブリーフの折衷案的なものとして発売したことから人気が出たといわれています。その後、2000年頃から、ローライズジーンズの人気とともに普及、一般に定着していったと考えられます。
「ブリーフ派かトランクス派か」どころか、今の30代以下が高齢になる頃には「ボクサーパンツ」が圧倒的主流になっている、あるいは新しいタイプのパンツが台頭しているかもしれません。