はじめに

前週末から今週頭にかけて、日本のメディアはドナルド・トランプ大統領の来日一色。大統領の大相撲観戦や六本木での“おもてなし”について、事こまかに報じました。

しかし、後に振り返ると日米の“親密外交”よりも世界経済にとって大きな影響を与えるかもしれない変化が、時を同じくして欧州で起きていました。4億人余りの有権者がEU(欧州連合)の先行きに民意を示す、欧州議会選です。

投票は5月23日から26日にかけて行われました。この原稿の執筆段階ではまだ、最終的な投票結果が明らかになっていませんが、各種報道などによると、「国民連合」をはじめとするEUに懐疑的な勢力が加盟各国で議席を伸ばしたもようです。


投票率は前回よりも上昇

「今回の選挙結果はフランスの真意を示すものだ」。フランスの極右政党、「国民連合」のマリーヌ・ルペン党首はこう高らかに勝利宣言を行いました。

欧州議会はEUの立法機関です。議員定数は751で任期は5年。加盟国には人口に応じて議席が配分されています。フランスのストラスブールで大半の本会議が開かれており、約1,600億ユーロに達するEU予算などに強い権限があります。

EU域内の有権者であれば投票が可能。海外に住む人でも大使館などで票を投じることができます。毎回問題になっているのが投票率の低さ。2014年の前回選挙でのEU各国全体の投票率は42.6%にとどまりました。

しかし、今回の選挙では投票率が上昇したとみられています。フランスのテレビ局「フランス2」によると、同国の2014年の投票率は42.4%だったのに対し、今回は26日午後7時30分(現地時間)時点での推定で51.3%に達しています。

なぜ投票率は上昇したのか

投票率の上昇は、域内全体でEUに対する賛否や難民問題が大きな争点になったことが主因とみられます。フランスでは「ジレ・ジョーヌ(黄色いベスト)」を身にまとった人たちによる反政府の抗議行動が昨年11月から続いていることも、有権者の投票意欲を高めた面がありそうです。

フランスは2017年の大統領選と同様、「国民連合」のルペン党首と、親EU派の「共和国前進」を率いるエマニュエル・マクロン大統領の事実上の一騎打ちとなりました。結果はルペン党首の勝利。同日午後8時時点(同)の得票率は「国民連合」が23.2%で、「共和国前進」が21.9%、と「フランス2」は報じました。同局のコメンテーターは「選挙結果は国民連合の躍進とマクロン大統領の敗退を意味する」と話しています。

一方、欧州議会で96と最大の議席数を有するドイツでも、極右政党が健闘しました。アンゲラ・メルケル首相の「キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)」の得票率が前回よりも7.4ポイント低い27.9%。連立を組む「社会民主党(SPD)」も11.7ポイント低下の15.6%と親EUの2大政党の退潮が目立ちました。

これに対して移民排斥などを掲げる「ドイツのための選択肢(AfD)」の得票率は10.5%となり、前回から3.4ポイント上昇しました(いずれも「フランス2」の報道に基づく)。

<写真:ロイター/アフロ>

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