はじめに

睡眠を妨害するものはさまざま

それぞれ何が睡眠を妨げているのでしょうか。

国民健康・栄養調査(2015年)で、男女・年代別に睡眠の妨げとなっていると思うことを見ると、男性は20~50代で「仕事」、60代以上で「健康状態」が最大の理由となっています。60代男性では「仕事」も2番目の原因となっています。

一方、女性は年代により変わり、20代では「就寝前の携帯等(就寝前に携帯電話、メール、ゲームなどに熱中すること)」、30代では「育児」、40代では「家事」、50代では「仕事」、60代で「その他」、70代以上で「健康状態」が最大の理由となっています。20代と40代女性は「仕事」も、50代女性は「家事」も2番目の理由となっています。

【男女・年代別 睡眠確保を妨げること】
図 男女・年代別 睡眠確保を妨げること

睡眠時間が減少しているのは有業者

さらに、近年、睡眠時間は減少傾向にあります。

特に有業者で減少しています。ただし、男女で減少スピードには差があり、1996年には16分あった男女の差が、2016年には10分に縮み、1996年には20分あった有業男女の差は、2016年には14分に縮んでいます。

【男女・有業男女の平均睡眠時間の推移】
図 男女・有業男女の平均睡眠時間の推移

「睡眠・覚醒障害」は、病気の1つ

近年、睡眠の重要性がより認識を高め、WHOが2018年に公表した新しい国際疾病分類では、主要な病気の1つとして「睡眠・覚醒障害」に新たに疾病コードが割りあてられました。

これまで睡眠に関する疾病は、「精神及び行動の障害」や「神経系の疾患」に分かれていただけでなく、睡眠に関連する症状の多くに疾病コードが割りあてられていませんでしたが、新たにコードが割りあてられたことで、今後、世界中で、重要度が増し、症状別に患者数が把握されるなど実態把握が進むと考えられます。

日本で過労死が社会的に注目され始めたのは1980年代後半からと言われており、冒頭でも触れたとおり、長時間労働の是正が少しずつ進んできていますが、少なくとも睡眠時間を増やしてはいないようですし、睡眠を妨害する理由も「仕事」が多くなっています。長時間労働の是正や、企業による従業員の睡眠改善の効果は期待できます。

しかし、現在のところ、睡眠時間が最も短いのは、家事と仕事に追われている女性。企業による取組に頼るだけでなく、家庭内での家事の分担の確認や家事代行サービスの利用等も考えてみる必要がありそうです。

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