世界最大の自動車メーカー連合誕生のシナリオが、浮上してからわずか1週間あまりで消え去ってしまいました。欧米大手自動車メーカーのフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は6月6日、フランスのルノーに提案していた統合を撤回したと発表しました。

統合が実現すれば、ルノーと連合を組む日産自動車・三菱自動車を加えた年間の販売台数は1,500万台あまりに到達。現在1位のドイツのフォルクスワーゲンを大きく上回る計算でした。

ルノーとFCAの統合話は、なぜ短期間で露と消えたのか。フランス国内で報じられている内容も踏まえて、その舞台裏を探ってみます。


統合破談を現地メディアはどう伝えたか

FCAとルノーの統合が破談になったのは、15%のルノー株式を保有するフランス政府の過度の介入が主因とみられています。FCAは撤回について、「フランスの政治情勢が両社の統合を実現させる状況にないことが明らかになった」などとする声明を公表。仏政府への不満を示しました。

フランスのメディアの報道などによれば、統合後のルノーで働く人たちの雇用維持や同国政府からの役員の受け入れなど、政府はさまざまな要求をFCA側に突き付けました。これに対して、FCA側からは「政府の要求はすべての当事者が損害を被る状況へと導くものだ」などの声が上がっていたそうです。

同国政府には「FCAがどうしてこうも早く、撤回を決めたのか理解に苦しむ」との見方もあるようですが、FCAが政府の度重なる口出しにイライラを募らせていたのは想像に難くありません。

ルノーは6月5日に開いた取締役会で、統合案をめぐる採決を実施。日産自動車からの代表2人が棄権。フランスの大きな労働組合であるフランス労働総同盟(CGT)の代表が反対に回りましたが、他の役員は賛成したもようです。しかし、フランス政府が「日産自動車を納得させるために時間が必要」などと決定の先送りを求めたといいます。

取締役会は同日の深夜まで続きました。FCAによる撤回を受けて、フランスの日刊紙「ル・フィガロ」の電子版は「取締役会の迷走の翌日、ルノーは二日酔いのうちに目覚めることになる」と伝えました。

破談を招いたフランス政府の思惑

8日から福岡で開かれた20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議で来日するフランスのブリュノ・ル・メール経済・財務相が、日産の合意を取り付けるため、会議出席の合間を縫って同社の幹部と接触。そのうえで11日にルノーの取締役会を再度、開催を求める――。同国政府はこうした筋書きを描いていたとされています。

国の産業政策で重要と位置付けられる会社の意思決定には介入も辞さないのが、フランス政府の従来からの基本姿勢です。

2004年には、フランスの製薬会社サノフィ・サンテラボが同国のアベンティス社を買収し、サノフィ・アベンティスが誕生した際、強力に介入。同様にアベンティスとの統合交渉を進めていたスイスのノバルティス社が断念した経緯もあります。

今回も積極的に口出ししたのは、日産との提携関係を維持したいとの思いが強かったためといえます。「FCAとルノーの統合をめぐる話し合いには、一貫して距離を置いていた」。フランスのメディアは日産の姿勢をこう伝えています。距離を埋めようとした同国政府の日産に対する「気配り」が破談につながってしまった面は否定できません。

<写真:ロイター/アフロ>