イタリアのファイナンス情報サイト、スーペルマネーの調査によると、イタリア人の5人に1人は貯蓄額が1,000ユーロ(約12万円)以下なのだとか。自分の身に置き換えてみるとちょっと不安を感じる数字です。イタリア人はどのような生活を送っているのでしょうか。


イタリアの若者失業率は約30%

最初に補足しておくと、この調査は若年層に絞ったものではなく、あくまで全年齢を対象にした調査です。さらに同調査ではイタリア人の75%は貯蓄額が5,000ユーロ(約60万円)に満たないことも明らかになっています。貯蓄額が低いのは決して一部の層だけではなく、イタリアの全体的な傾向と言えそうです。

また、OECD(経済協力開発機構)の統計によると、2018年におけるイタリアの家計貯蓄率は2.4%に止まるのだとか。同じヨーロッパの国でも、ドイツ(9.9%)やスイス(17.8%)などと比べると大きな開きがあり、イタリア人の貯蓄額の低さを裏付ける結果となっています。

この調査結果を見て、最初に私が抱いたのは「さもありなん」という感想でした。イタリアの経済状況は一時期より少しは良くなっているとはいえ、決して楽観できる状況ではありません。

私がイタリアに引っ越したのは2012年のこと。ギリシャやスペイン、イタリアなどEUの主要国で次々と経済危機が起こっていた最中です。住み始めた当初は複数人でルームシェアをしていましたが、収入に比べて家賃が非常に高いイタリアでは(特に若年層は)珍しいことではありません。そして、同居人の中で定職についているのは4人中1人しかいませんでした。

それから7年が経ちましたが、イタリアの失業率は依然として高く、経済危機の真っ只中にあった2012年2月以降10%を下回った月はありません。とりわけ15~24歳の若者失業率は高く、なんと31.6%にものぼります(2018年11月)。日本の失業率が3.6%であることを考えると、状況の酷さが想像できるのではないでしょうか。

将来よりも、今を楽しむことにフォーカス

イタリア人の貯蓄額が低いのは、そもそも貯蓄する余裕がないという現実的な理由もありますが、同時に「そういう気質である」という理由もあります。

イタリア人は将来のためのお金を残すよりは、現在の楽しみを大切にする意識が強く、日本人に比べると貯蓄意識は高くありません。「刹那的」で「無計画」なのではなく、あくまで「今を大切にする」ことに重きを置くといった感じでしょうか。

現代は先を見通すことが難しい時代です。インフレも激しく、イタリアもいずれユーロを離脱するかもなんて噂が聞こえている現状では、貯蓄をしたからといって必ずしも報われるとは限りません。「そもそも明日のこともわからないのに、30年先のためにお金を残すなんて考えられない」という感覚が働くのも無理がないことなのかもしれません。

もちろん、その背景には充実した医療制度や教育・子育てにかかるお金が日本に比べると少ないという事情もあります。ただ、同じヨーロッパ内の国であるドイツやスイスでは貯蓄率が高いことを見ると、やはり貯蓄への意識は低いと言わざるをえないでしょう。

以前、イタリア人の友人に「日本は地震が多いから非常用持出袋がある」という話をしたら、「私たちにはそんなメンタリティはないわね」とあっさり返されたことがあります(イタリアは日本と同じで火山が多く、地震大国なのです)。
「万一のときはどうするんだろう」とその時は思いましたが、今考えてみるといかにもイタリア人らしい答えなのかも。将来の幸せのために準備をするのは大切なことですが、現在を楽しむのも同じくらい大切にするべきというのが、イタリア人のメンタリティなのです。

将来のための備えがないと不安というのは、誰しもに共通する思いであることは違いありません。ただ時には、イタリア人のように今を楽しむことを大切にするのも、豊かな人生を送る秘訣なのかもと思うのです。