子育て

特別養子縁組ではなく、里親を選んだ女性のケース

戸籍にこだわらず、「家庭」を必要とする子どもを育てる:最終回

里親は子育てを通じて、困難を抱える子どもを支援する

特別養子縁組と違って、里親は戸籍に子どもを入れるというわけではありません。しかし、血縁のない子を育てるという意味では、同じ役割を果たします。ただ里親のほうが、戸籍に子どもをいれないぶん、「社会で子どもを育てる」という意味合いが強くなります。

現在、里親として子どもを育てている人たちの中には、「子どもが欲しいから」というよりは「子育てを通じて、困難を抱える子どもを支援する」という役割の深さに共感し、里親をしているという人たちは多くいます。

連日のように、テレビや新聞では子どもが虐待される痛ましい事件が報道されています。里親を必要としている子どもたちの中には、虐待のほかにも親の病気や死亡など、実親と離れて暮らさざるを得ないさまざまな理由があります。

全国には、こうした社会的養護(※)が必要な子どもが約4万5,000人以上おり、そのうちの約8~9割は、乳児院や児童養護施設で暮らしています。加藤さんのような里親が増えれば、A君のように「家庭」を知り、特定の大人と信頼のおける愛着関係を築くことができます。そしてそれは、他人を信頼して生きられる子どもを増やしていくということにも繋がります。

※社会的養護とは:実家庭での生活が難しい子どもたちを一定期間、社会(里親や、乳児院、児童養護施設など)が育てることです。

子どもを産みたかったのではなく、育てたかったんだと気づいた

里親は、新生児が紹介されることの多い特別養子縁組と違い、1歳以上の子どもが紹介されることが多いのが実情です。もちろん登録時に児童相談所に希望は伝えますが、3~4歳の子のケースや、小学生や中学生を預かり育てることもあります。年齢が大きくなればなるほど、里親と里子の相性が合わないこともあります。

実は加藤さんにも、A君の前に紹介されたS君がいました。しばらく一緒に暮らしましたが、どうしても相性があわず、S君は結局、施設に戻ったという経験をしています。

「本当に頑張ったのですが、残念な結果となってしまいました。当初は落ち込み、半年くらいは子どものことを考えないようにして過ごしました。でも少し落ち着いた頃、主人と話し合って、もう一度、気持ちを入れ替え、頑張ってみようと思いました。そうこうしているうちに、当時2歳半のA君を紹介されたんです」(加藤さん)。

血の繋がる実の親子でさえ「性格が合う・合わない」があるように、人間同士のことですから、相性はどうしても避けられません。しかし何か困り事があった場合は、里親の場合は児童相談所や、民間支援機関のサポートがあり、一緒に考えながら子育てをしていく体制が整えられています。

加藤さんは、こうした経験を経たからこそ、いまA君の子育てを頑張ろうと思えるといいます。

「A君は、ご縁があって私のもとに来たと思っています。実子とは違いますが、子育てのやりがいはこの上ないものです。里親をやって気づいたことは、私は子どもを産みたかったのではなく、育てたかったんだということ。ぜひ多くの方に、大人を必要としている子どもを育てることの、やりがいを知ってほしいと思います」と話します。

※里親制度の詳細は、筆者が執筆する「Tokyo里親ナビ」をご欄ください。このサイトで紹介しているのは東京都の里親制度ですが、他の地域在住の方にとっても参考になるように里親の役割を分かりやすく紹介しています。

Share to facebook.Share to twitter.Share to line.Share to hatena.

あなたにオススメ