はじめに
「六厘舎」や「斑鳩」などの有名店が軒を連ねる、JR東京駅八重洲口地下の「東京ラーメンストリート」が2019年6月に開業10周年を迎えました。昼時は出張中のビジネスパーソンや旅行客などで行列が絶えず、売り上げも右肩上がりで推移しています。
かつては東京駅周辺にラーメン店が少なく「ラーメン砂漠」だったというエリアに登場した集積地帯。もちろん好立地ということもありますが、一部のラーメンファンだけでなく幅広い層を取り込むことに成功した背景を探ります。
ラーメンを100軒以上を食べ歩いた
東京ラーメンストリートは、JR東海グループの東京ステーション開発が運営を手がける「東京駅一番街」の地下1階に位置しています。店舗面積は8店舗合わせて約500平方メートルと、テニスコート2面ほどの大きさ。1日の平均客数は約5,500人、年間約200万杯が売れます。
2018年の売り上げは約20億円で、8店舗での運営体制が始まった2011年と比べて約10%増加。店舗リニューアルの時期は工事で一時的に売り上げが下がるものの、右肩上がりでここ10年、順調に推移してきました。
「胃袋は1個しかないので、食べ歩きで苦労しました。最高で1日4杯食べた日があります。試食をするまでに90分ぐらい並んで、顔の半分だけ日焼けしたこともあります」
こう振り返るのは、東京ステーション開発の常務取締役・営業開発部長である佐々木義衛さん。東京キャラクターストリートや東京おかしランドなども生み出した人物です。開業前は出店する4店舗の候補となるラーメン店を探すため、半年間で100店舗以上を食べ歩いたといいます。
しかも店舗によっては3〜4回も訪問し、昼時のピークタイム、アイドルタイム、晴れの日、雨の日など、さまざまな角度から見定めました。味だけではなく「厨房の中が整理整頓されているか」「従業員のモチベーションが笑顔に表れているか」などを評価シートに詳細に記入したそうです。
「腕組み店主」のイメージを刷新
ラーメン店と出店交渉する際は、店主と直接話をすることになるため、それまでの企業間のリーシングに比べて緊張感があったといいます。
「こんなことを言うと嘘っぽく聞こえますが、当時はお金のため云々より、『東京駅を楽しい街にしたい』という思いのほうが強かった。ピュアな思いでラーメンについては開拓していたので、そういう思いが伝わればと考えていました」(佐々木さん)
これに「ラーメン店主はクセの強い方が多いので苦労されたでしょうね」と、日本ラーメン協会理事長で「塩らーめん専門 ひるがお」「とんこつラーメン俺式」を東京ラーメンストリートに出店している前島司さんは笑います。
開業後も東京ラーメンストリートは数年ごとに店舗を入れ替え、打ち出すコンセプトも刷新。かつては店主が腕を組んで、頭にタオルを巻いた集合写真をポスターに使用していましたが、2013年に「We Love Ramen」というコンセプトで、女性の登場する柔らかいイメージに変更しました。
「ラーメンマニアが中心だったものから、この時期からはおいしいラーメンをいろいろな人に味わってもらおうと裾野を広げました」と佐々木さんは語ります。