はじめに

「化粧品大国」として知られているフランスに今、新風が吹いています。風の発生地は、カリブ海に浮かぶ面積1,100平方メートルあまりの美しい島、マルティニーク。フランスの「海外県」で、約37万人が暮らしています。

欧州の一部の国々は、過去の植民地政策の影響などで、今もなお海外に領土を有しており、マルティニークもその1つ。カリブから吹いた風は、フランスと日本の化粧品市場にどんな変化をもたらしているのでしょうか。


表皮に含まれる油に着目

マルティニークの主な産業は観光や農業ですが、フランス国立統計経済研究所のデータによると、2018年の失業率は18%とフランス全体の倍の水準。そうしたマルティニークの人たちの生活を支える産品の1つがバナナです。

5,000ヘクタールの土地に、15メートルの高さにも達するバナナの草(バナナは「木」ではなく「草」が正しいそうです)が植えられています。年間平均気温は26度前後とやや高め。蒸し暑く、雨量も多い。こうしたバナナ栽培に適した気候条件がそろっています。

バナナ
バナナはマルティニークの主要産品として知られる

白人の父とマルティニークで育った母の間に生まれて10代をマルティニークで過ごし、「バナナの成分を使った化粧品を作りたい」という自らの夢を実現させた起業家が世界を舞台に活躍しています。「KADALYS(カダリス)」という化粧品ブランドを展開するシャーリー・ビロさんという女性経営者です。

カダリスを立ち上げたのは2012年。マルティニークでは古くからバナナが食用としてだけでなく、肌の治療にも用いられてきました。ビロさんは子供のころからその効用を実感しており、研究を行ってバナナ由来の有効成分を開発。バナナの表皮に含まれる油が持つ皮膚の老化を防ぐとされる機能などを使った化粧品の市場投入へこぎつけました。

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