はじめに
激化する高級クレカの顧客獲得競争
なぜラグジュアリーカードはこのような優待を企画したのでしょうか。
国内で高級クレカの定番と言えば、アメックスやダイナーズ。かつてはゴールドカード以上のクレカは招待制で、一部の人しか持てない特別なものでした。しかし、近年では誰でも申し込めるものが増え、会員獲得競争は激しさを増しています。
その中で、ラグジュアリーカードが日本に上陸したのは2016年と後発です。最もランクの低いチタンカードでも年会費5万円(税別、以下同)、ブラックカードは同10万円、ゴールドカード(招待制)は同20万円と、年会費は決して安くはありません。知名度はまだまだ低く、顧客数は非公表ですがそう多くはなさそうです。
日本クレジットカード協会の調査によれば、国民1人当たりの平均所持枚数は2.9枚。知名度が高いものや年会費無料のものが多くある中で選ばれるためには、他社にはない“特別感”“ステータス感”が必要です。
「今までのカードのイメージを超える、新しいサービスが必要」と、ラグジュアリーカードのハミルトン・林社長は話します。
クルーズを会員向け優待に選んだワケ
そのために今回選んだのが、クルーズという優待でした。「日本ではまだクルーズは高額で長い日数が必要というイメージがあり、楽しむという文化が根付いていません。ところが、今回のように短い日数でもリフレッシュすることができます。カードを通じて、新しい体験をしてもらうことが目的です」(ハミルトン社長)。
アジア地区を統括するハミルトン社長
ラグジュアリーカード会員の平均年収は約2,000万円。30~45歳が会員の中心で、3割が港区、渋谷区、世田谷区在住です。都心で忙しく働く世代が多く、なかなか新しい趣味や休日の過ごし方を見つける時間がない人たちが多いそうです。
そこで、同社はクレカを単なる決済手段でなく、会員の人生の中で印象に残り、心が喜ぶような体験を提供するものと位置付けました。他にも、無料で国立美術館を観覧できたり、映画を楽しめたり。夜の美術館を特別に拝観するナイトミュージアムツアーや、提携するレストランへのリムジンで無料送迎などの優待もあります。
「うちは非上場なので、シェアナンバーワンを目指す必要はありません。人生が変わるような新しい体験、会員の人生に役立つものを提供する会社でありたい。いつも新鮮な企画を考え続けます」(ハミルトン社長)。特別感のある優待で他社との差別化を図る、これがラグジュアリーカードの戦略です。
使いこなせばモトが取れる?
人気サイト「クレジットカード完全比較」を運営する清水太郎さんは「最近は招待制を取らない会社も増え、プラチナカードを持ちやすくなりました。その中で、ラグジュアリーカードの優待には、他のカードに埋もれない強さがあります」と評価します。
自身でも、会員向けのソーシャルアワーやディナーイベントに参加し、夫婦でワインを楽しんだり、映画や美術館にいったりと、優待を活用しているそうです。
「新しいライフスタイルを提案する」という理念を掲げるラグジュアリーカード。記者も初クルーズを経験し、次からはクルーズ旅行も選択肢に入れようという気になりました。普段はなかなか新しいことに挑戦する余裕はありませんが、クレカに任せておけば良い提案をしてくれるかも。優待をフルに活用すれば、年会費以上の価値はありそうです。