はじめに

最近、暗号資産(以下、仮想通貨)が再び脚光を浴びています。代表的な仮想通貨であるビットコインの価格がこの数ヵ月の間に大きく上昇しましたし(直近は一時下落)、米フェイスブックが新たなデジタル通貨「リブラ」の事業計画を発表して、各国の政府や中央銀行の今後の対応も注目されています。

今回は、すでに取引されているビットコインなどの代表的な仮想通貨について、そもそも金融商品としてどう評価すべきか、長くアナリストとして銀行業界を分析してきた経験を踏まえて、考えてみたいと思います。


特徴は低手数料、高リスク、大きな価格変動

仮想通貨の利用者にとっての一番のメリットは、手数料が安いことでしょう。たとえば銀行送金なら、国内送金で数百円、海外送金で数千円の送金手数料に加えて為替手数料もかかりますが、仮想通貨なら数円から10円程度の手数料で済みます。

ECサイトや店舗での決済に利用する場合も、クレジットカードやQR決済だとお店側に数%の手数料がかかりますが、仮想通貨の手数料率は低くなっています。

一方で、仮想通貨が盗み出される流出事故が何度も発生していますし、犯罪マネーに利用される可能性が指摘されています。

仮想通貨の登録・保管には、安全性が高いブロックチェーン技術が使われていますが、その手前の段階でのシステムの管理が既存金融機関のように厳重ではなかったり、本人確認や利用者保護の仕組みが整備されていないことが背景にあります。現時点では、極めてリスクの高い商品と言えます。

価格変動幅が大きいことも特徴です。特に2017年以降は、値動きが大きいことが世界中の人たちの関心を集め、大量のマネーが流れ込んだことで価格変動がさらに助長される、というバブル的な局面となることもありました。

そして、ビットコインなどの仮想通貨の価格が大きく動くと、取引所運営やマイニングなどの関連業務を手がけている企業の株価が「関連銘柄」として連動することもよく見られます。

金融商品の価格は経済価値が出発点

では、なぜ価格変動が大きくなりやすいのでしょう。金融商品は基本的に、ベースとなる経済価値があります。市場価格は、ベースの価値が変化することや、変化するだろうとの期待を受けて、上がったり下がったりします。

債券は一定期間ごとに利息が付きます。「年●%」の固定利回りが多いので、市場金利の変化に合わせて債券価格が調整されます。

株式は、その銘柄企業の利益と配当がベースです。決算内容や関連する統計データ、あるいは新商品情報などを見て、「●年後の利益と配当は●%増かも」と予想されると、株価が先回りして上がります。

原油や農産物などの商品市場の場合は、商品そのものの価値がベースです。需給状況の変化などで価格が動きます。

仮想通貨の経済的な価値は、手数料の安さと利便性でしょう。さきほど指摘した通り、送金手数料は銀行の数千円以上に対して、数円から10円です。

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