はじめに

「たまには負けたっていいもの」「人間は点数がない」「でっかくけんめい」――。書家で詩人の故・相田みつを氏の作品のようで実は異なるこれらの言葉は、「AIだみつを(えーあいだみつを)」によるものです。

相田氏の詩を学習したキャラクター・AIだみつをの生み出した言葉のラテアートを楽しめる「AIだみつをカフェ」が、東京・原宿の「ネスカフェ 原宿」に7月21日まで期間限定オープンしています。どのような仕組みで作られているのか、現地を取材してきました。


約500編の詩をAIが学習

カフェの中央に堂々と設置されている、AIだみつを像とモニター。来店客が像の持つツボ(マイク)に向けて、普段抱えている悩みや愚痴を語りかけると、声色や声の大きさなどから心の状態を「診断」します。その結果に応じて、AIだみつをの作成した「前向きになれる言葉」がモニターに表示される、という仕掛けです。

AIだみつをは、相田氏の残した約500編の詩を学習し、約8,000種類のオリジナルの言葉を生成。意味が通じないものや前向きではない言葉などを除いて、相田氏の筆跡をもとに約300種類を「書」に仕上げています。カフェでは「診断結果」に対応する言葉をラテアートシートとして提供する都合などから、さらに20に厳選したといいます。

記者がAIだみつをに悩みを打ち明けると、レーダーチャートで「心の状態」が表示されました。「モヤモヤココロ度」が85とやや高めのようで、「日頃の鬱憤がたまっているようなのだ」と診断結果が表示されました。

AIだみつカフェ

そして、AIだみつをがくれた言葉は「ここは自分が一番大事なときのところだな」。少し不思議な言葉遣いですが、相田氏風の書体のため、なんだか深いような気もしてきます。

AIだみつカフェ

AIだみつをの「前向きになれる言葉」をラテアートとして乗せた「アイスクレマコーヒー」は、390円(税込み)で飲むことができます。他にも、相田氏の詩の中にたびたび登場し、「自分は自分、そのままでいいんだよ」という思いを表現しているという「トマト」を用いたスペシャルメニューも販売されています。

相田みつを氏の長男も快諾

この企画は、ネスレ日本が提案するアイスコーヒーにきめ細やかな泡をのせて飲む「アイスクレマコーヒー」を訴求するもの。アイスクレマコーヒーのメインターゲットは女性で、仕事や家事で忙しい人が、一息つくシーンでの飲用を想定しています。

相田みつを氏の詩とのコラボレーションをした理由について、同社のマーケティング&コミュニケーションズ本部の村田敦氏はこう説明します。

「相田みつをさんの詩は前向きになれるものが多く、クスッとしたりほっこりする内容のものも含まれています。頑張っている女性がストレスを軽減したり、気分転換を図ってもらう仕組みを考えた時に、アイスクレマコーヒーとの親和性があると考えました」

AIだみつカフェ

相田氏が生前にネスレのコーヒーを愛飲していた縁もあるといいますが、今回の奇抜な企画について、相田氏側は「相田みつをを若い人にも知ってもらうきっかけになる」と快諾したそう。みつを氏の長男で「相田みつを美術館」の館長を務める一人氏は、メディア向けお披露目会に出席し、AIとなった父との「再開」を果たしたといいます。

2015年にはサンリオの「ハローキティ」とコラボした日めくりカレンダー「幸運日めくり ハローキティのにんげんだもの ~毎日が楽しくなる31の言葉~」を発売するなど、意外な組み合わせで展開している「相田みつを」。今後も別の形でコラボをしていくかもしれません。

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